個人事業主と消費税の関係を知れば、フリーランスはもっと楽しい

個人事業主と消費税の関係を知れば、フリーランスはもっと楽しい

個人事業主にとって消費税は少々複雑な存在。報酬が8%増えるのはうれしいけれど、上乗せ請求するのは気が引ける。がんばって売上が1,000万円を超えたはいいけど、今度は事務処理がやっかいなことになるらしい……。2020年には10%に増税されるかもしれない消費税って、一体何がどうなってるの?

個人事業主にささやかな恩恵をもたらしてくれる消費税

何か買ったりサービスを受けたりするたびに私たちは消費税を支払っています。いつの間にやら税率アップ、気がつけば100円のものを買うのに108円必要な時代となりました。

消費税は公私ともによく支払うけれど、自分の仕事の報酬にはいまだに上乗せできなくて……とお嘆きのフリーランスは多いはず。売上が1,000万円以下の個人事業主は消費税の納税義務を免除されているために、外税金額での請求は気が引けてつい遠慮してしまうのですよね。

同感です。しかし日々の経費等で私たちもたくさん支払い、お金を循環させているのですから断じて「もらいっぱなし」というわけではありません。

今後さらに税率が上がるとも言われている消費税。事業運営のためにも、正しく上乗せして請求することをおすすめします。今回は知っているようであまり知らない、個人事業主と消費税の関わりについてのお話です。

消費税を納めなくてはならない個人事業主とは?

フリーランスをはじめとする個人事業主は、消費税の課税事業者と免税事業者にわかれます。まず、開業した年とその翌年の2年間は「免税事業者」です。消費税の納税義務は免除され、特別な届出等もいりません。

また事業の年数にかかわらず、課税売上高が年間1,000万円を超えてないうちは、同じく免除事業者です。仕事をがんばってたくさんこなし、1年間の売上がめでたく1,000万円を超えた場合、その翌々年から消費税の「課税事業者」となります(前々年の売上高で納税額を計算するため)。

ただし前年の前半のうちに1,000万円を超えたときは翌年から課税事業者となり、納税義務が生じます。すみやかに「消費税課税事業者届出書」を税務署に提出しましょう。

つまり消費税は、年間売上1,000万円を超えた事業者にだけ納税義務が発生するということ。どうやら事業規模の小さなうちは、あまり縁のない税金と考えていてよさそうです。

ちょっとむずかしい「消費税のしくみ」

改めて消費税のしくみについて調べてみました。消費税の課税対象は、次の4つの要件を満たしている取引となります。

  1. 国内において行なうもの
  2. 事業者が事業として行なうもの
  3. 対価を得て行なうもの
  4. 資産の譲渡等(販売、貸付け、サービスの提供)

となっています。消費税は基本的に「販売時にお客さんから預かった消費税額(仮受消費税)」から「事業用に何かを買ったとき支払った消費税額(仮払消費税)」を差し引きし、求めた納付税額をまとめて納めるようになっています。

このとき必要となるのが先ほどの「課税期間分の消費税及び地方消費税の確定申告書」です。消費税の経理方法には、税込経理方式と税抜経理方式の2通りあり、免税事業者は税込経理方式のみです。

こちらのほうが処理が簡単なので個人事業には向いているようです。税込経理方式では、仕訳の際、取引金額のなかに消費税を含めます。たとえば売上金額1万円の場合、消費税(8%)800円を加算した合計1万800円を売上高に計上するのです。

確定申告をして消費税を納付したときの科目は「租税公課」、逆に還付をうけたときは「雑収入」となります。課税事業者の経理については、なかなか複雑になるので専門家におたずねくださいね。

個人事業主にはおトクかも? 〜消費税の益税問題〜

さて消費税とは、預かった消費税と支払った消費税の差額を計算し、後でまとめて納めるシステムだということが分かりました。

消費税の免税事業者はなんと、この差額を納めることが免除されているのです。ここで問題。免税事業者であれば、生じた差額を自分でもらってしまっても構わないのでしょうか?

答えはなんと「YES!」です。免税事業者は消費税の差額を納めなくてもよいという点は「益税問題」とよばれ、問題点として挙がっています。

しかし免税事業者であっても、自分の商品に消費税を上乗せして請求することは、何の問題もありません。小規模事業を営む個人事業主は、この益税問題のおかげでささやかな恩恵を受けられているのですね。

フリーランスが気をつけたい源泉徴収と消費税

源泉徴収とは、支払う報酬金額のなかから税金分を天引きし、本人のかわりに税務署へ納めることをいいます。たとえば100万円以下の報酬の場合、支払金額に10.21%を掛けた額が源泉徴収されます。

ライターや作家の原稿料、講演会の講演料、カメラマンの撮影費、士業など専門家への報酬が対象となるため、フリーランスは源泉徴収される機会が多くなりがちです。

請求書を発行する際、報酬額と消費税とをはっきり分けて書いておくと、本来の報酬額のみを源泉徴収してもらうことができます。

源泉徴収は基本的に支払額全額が対象となるため、税込金額だけを記載すると、消費税からも源泉されてしまうことになりますのでどうぞご注意を。

経理に手間をかけられないフリーランスや個人事業主は、消費税とは付かず離れずの距離感を保って「イイトコ取り」を目指しましょう。