読み間違われない・わかりやすい文章は、接続助詞に注意する

読み間違われない・わかりやすい文章は、接続助詞に注意する

接続詞についての記事、助詞についての記事をいくつか書いてきました。本稿では、その両方の機能を持っている接続助詞の使いどころについて解説します。まずは接続助詞の意味を確認しておきましょう。

接続助詞とは:助詞の種類の一。用言や用言に準ずるものに付いて、下にくる用言や用言に準ずるものに続け、前後の文(または文節)の意味上の関係を示す助詞。コトバンク

具体的な接続助詞としては、「ば」「が」「と」「し」「ので」「から」「ても(でも)」「けれど(けれども)」「のに」「て(で)」あたりが有名です。基本的には活用語(用語や助動詞)とセットになって、前後の文節を繋ぐ役割を果たしています。

接続助詞の種類

接続助詞の使い方について、注意したいポイントを紹介したいのですが、その前に『接続助詞の種類』をざっと見ておきましょう。接続助詞の種類は、大きく5つに分類するのがスタンダード。ここでも5分類で紹介します。

  1. 仮定の順接:仮定の事柄、「例えば……」の場合において、後ろに順当な事柄、つまりは事実の事柄が続く関係。
  2. 仮定の順接/例文:お腹が空いたら、冷蔵庫のありもので昼食を食べる。

  3. 確定の順接:仮の話や可能性の話ではなく、確定している事柄に対して、順当な事柄が続く関係。
  4. 確定の順接/例文:お腹が減ったので、山盛りパスタを貪った。

  5. 仮定の逆接:仮定の事柄について、順当ではない、普通とは違うような事柄が続く関係。
  6. 仮定の逆接/例文:空腹で倒れそうになっても、水一滴すら口に入れないつもりだ。

  7. 確定の逆接:確定している確からしい事柄に対して、順当ではない、頭のおかしい事柄が続く関係。
  8. 確定の逆接/例文:腹が減って倒れたけれど、目の前にあるステーキを食べなかった。

  9. その他の接続:上記4つに分類されない関係で、3つくらいの種類がある。
  10. 並立の関係/例文:腹が減って、喉も渇いた。
    補助の関係/例文:もう一度たべてみる。
    連用修飾語/例文:パスタを頬張りながら、次のパスタを茹でる。

接続助詞に注意が必要な理由

接続助詞の代表的な5種類について紹介しました。改めて接続助詞とは何かというと、「文と文の意味関係を表して接続するもの」となります。接続詞でも助詞でもない、新しい品詞です。普通の助詞の場合、主語などの単語に対して用いられますが、接続助詞は、ひとつの文章に対して用いられるのが違いといえます。

「〜〜ので」「〜〜なのに」「〜〜ですが」「〜〜ですから」などが代表的な接続助詞です。特定の単語ではなく、接続助詞が用いられる前にある『文章そのもの』に作用することになります。

ざっくり接続詞について理解できたところで本題、接続助詞の使い方に注意すべき理由です。

前後関係を明確にする接続助詞と曖昧にする接続助詞

接続助詞の代表選手として、「〜〜て」を取り上げてみます。理解を促進するために、もうひとつの代表選手「〜〜ので」も挙げておきましょう。前者の「〜〜て」は、文章の関係を曖昧にする接続助詞。後者の「〜〜ので」は、文章の関係を明確にする接続助詞です。

「AのでB」という、接続助詞を用いた文章の場合、『AがBの原因である』という、文章の関係が明確になります。逆に「AてB」という接続助詞を用いた文章は、関係性が曖昧になりがち。もう少し理解しやすい例文を書いてみましょう。

接続助詞によって、文章の関係が曖昧になった例:
1)和彦は腹が減って、昼休みのミーティングをすっぽかした。
2)和彦は腹痛が起きて、吐き気もしている。
3)和彦は暴飲暴食をして、体脂肪率が低い。

例文を3種類書いてみましたが、実はそれぞれ使われ方、「〜〜て」によって表現される状態が異なります。

(1)の例文は、理由を意味意味するための接続助詞。腹痛&吐き気のせいで、トイレから出られないということ。(2)の例文は、別の物事を付け足す『添加』の働きをします。腹が減ってしまったため、ミーティングをキャンセルして昼飯でも食いに行ったのでしょう。(3)は逆説の使われ方。暴飲暴食をしているのに、体脂肪率が低いという羨ましい状態です。

例文3つだけでも、異なる「〜て」の使われ方をしています。しかし使用される接続助詞は同じ。それぞれの文章を読む人は、どの作用を狙った接続助詞なのかを推察しながら読み進める必要がでてきます。短い文章なので読み返す手間はありませんが、文字が目に入ったまま理解してもらうためには、不親切な文章であり、不用意な接続助詞の使い方です。

読み手のストレスを最小限にするために、使用する接続助詞を変更してみてはどうでしょうか。曖昧な接続助詞「〜〜て」ではなく、明確な接続助詞を用いるのです。書き換えた例文をご覧ください。

前後の関係性を明確にする接続助詞で書き直した例:
1)和彦は腹が減ったので、昼休みのミーティングをすっぽかした。
2)和彦は腹痛が酷いし、吐き気もする。
3)和彦は暴飲暴食の毎日なのに、体脂肪率が低い。

接続助詞を正しく用いるポイント

接続助詞の分類と注意すべき点、特に「〜し」という接続助詞について紹介しました。ついでなのに、もういくつか、注意したいところと正しく使うポイントについて紹介しておきます。

逆接と順接の接続助詞を正しく分ける

接続助詞には大分すると、順接と逆接の用法があります。書いている文章の接続助詞前後において、意味合いが同じなのか、逆になるのかを意識するのがポイントです。先に書いた文章に対して、後ろにくる文章の関係が順接なのか逆接なのか。

(1)腹が減ったので、レストランを探した。
(2)空腹に我慢ならなかったから、牛丼屋に入った。

上記の例文は順接関係にある文章なので、接続助詞は「〜〜ので」「〜〜から」を使用しました。

(1)腹が減ったが、レストランを探した。
(2)空腹に我慢ならなかったのに、牛丼屋に入った。

こちらの例文は、同じように接続助詞を使いましたが、なんだか違和感があります。逆接の際に用いる接続助詞を使っているのに、逆接の文章ではないからですね。接続助詞が文章の内容を決めることはありませんが、あえて「〜〜が」「〜〜のに」という接続助詞を用いたいのであれば、以下のような例文になります。

(1)腹が減ったが、レストランに入らなかった。
(2)空腹に我慢ならなかったのに、牛丼屋を通り過ぎた。

順接と逆接の接続助詞を用いる際のポイントは、話の内容が読者の予想通りの展開になるのか、はたまた予想を裏切る展開になるのかで使い分けがなされます。

接続助詞を多用しない

続いて注意したいのが、接続助詞の多用です。できれば、ひとつの文章で登場する接続助詞は、ひとつが望ましいと考えています。接続助詞の機能とは、ひとつの文章ともうひとつの文章を接続することです。また順接と逆接があるわけですが、逆接の接続助詞を多用すると、話が行ったり来たりと脳が揺さぶられます。

「〜〜だけど〜〜なので〜〜だったが〜〜なのに〜〜だった。」とされると、最後に着地するのは『〜〜だった』なのですが、それまでの変遷が理解できなくなるのです。また一文がやたらと長くなる=理解しにくい文章になるという弊害もあります。

そこで徹底したいのが、接続助詞は一文内でひとつだけしか使わない。そもそも接続助詞で繋いでいる文章は、それぞれを分割しても成り立ちます。例文で確認してみましょう。

接続助詞を使用:腹が減ったので、レストランを探した。
接続助詞を未使用:腹が減った。レストランを探した。

ぶつ切りにしたため、ちょっと稚拙に見えるデメリットはあります。ただ例文の場合だと、一文に登場する接続助詞はひとつだけですから、遠慮なく使用したらいいのです。例文の中にもうひとつの事柄を付け加える際に、接続助詞を使うことになったら、文章を分けていくのをお勧めします。

文章を区切った場合には、後ろに来る文章の先頭に『接続詞』を付加するだけ。句点によって話がひと段落するので、接続詞が逆説であったとしても、読み手の理解は難しくならないと考えられます。

まとめ:接続助詞を使うときの注意点

長々と書いてきましたが、接続助詞の使い方について理解は進みましたか? 普段は何の気なしに使っている接続助詞ですが、種類や用法を分解してみると、あまりに無作為で使っていたことに気がつきます。文章は書き手のものではなく、読み手のもの。この基本に立ち返るならば、少しでもストレスなく読める文章を書いておきたいところです。

読み手にストレスを与えない接続助詞の使い方は、ポイントが5つ。

  • 接続助詞には5種類がある
  • 前後関係を曖昧にする接続助詞と明確にする接続助詞がある
  • 逆接と順接の接続助詞を正しく使い分ける
  • 接続助詞は一文にひとつ
  • 一文に複数の接続助詞が登場する場合、文章そのものを分ける

以上のポイントは、接続助詞を使用する際の基本中の基本です。用量用法を守って、適当で適度な接続助詞を含む文章を作成していきましょう。現場からは以上です。