インタビューの失敗例と対策についてご紹介します。記事作成に関わらず、インタビューをする機会がありますよね。わたしはこれまで、500名くらいにはインタビューさせていただいたのですが、なかにはとんでもない失敗をしたことがあります。上手に話を引き出せなかった……なんていうケースはざらですが(恥)、少しでも成功確率を上げるために、失敗ケースと対策について書いてみます。
インタビューの失敗パターンは大きく3つ
そもそもインタビューで「失敗した!」と感じるのは、どんなときでしょうか。アポイントが取得できなかったとか、大前提のものを除くと、だいたい3つくらいに分類できそうです。
- うまく話をきけなかった……ヒアリングの失敗
- 予定時間をオーバーした……タイムマネジメントの失敗
- 素材をきちんと保存できなかった……物理的な失敗
それぞれについて、失敗例と対処法を考えてみましょう。
インタビューのヒアリングに失敗して、求めていた答えをうまく引き出せなかった
インタビュー初心者が陥りやすい問題として、インタビュー時にあらかじめ用意しておいた質問案を上からそのまま使ってしまうことがあります。よく聞く話として、用意した質問事項を取材対象者に淡々と聞き、予定していた取材時間を大幅に余らせてしまったとか。残った時間を有効に使いたいところですが、質問事項が出ずに、文字通り頭が真っ白になってしまうのは想像に難くありません。
解決方法として、5W1Hを意識して質問する習慣をつけてしまうのはいかがでしょうか。「いつ(When)」「どこで(Where)」「だれが(Who)」「なにを(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を質問に付け加えることで、ひとつの項目を深掘ることができます。想定していたよりも多くの回答をいただけるので、次の質問へのヒントがみつかるでしょう。
また、質問事項は事前に相手と共有し、記事が目指す方向性のすり合わせをしておくことで、記事の趣旨からズレない回答が得られるとも意識しておきたいところ。前日に「よろしくお願いします」とメールを送る、取材時に手土産を持って行くなど、相手に気持ちよくインタビューを受けてもらえるよう、密なコミュニケーションをとっておくことも、求める回答をいただくことができるインタビューの準備のひとつといえそうです。
インタビュイーの機嫌を損ねかけた
ヒアリングでの失敗のひとつに、何らかの事情でインタビュイー=話していただく相手の機嫌を損ねてしまう場合もありそうです。最悪の場合、怒ってしまってインタビュー終了……なんてこともありえます。
インタビュイーの信頼を勝ち取り、より深い内容を引き出せるかどうかが、インタビュアーの腕の見せどころ。そのために、自己開示をしたり、プライベートの話を聞きながら、相手の考えの一部を聞く、などのテクニックがありますが、一歩間違えると相手の心象を悪くしかねない、なかなか難易度の高いスキルです。
インタビューに慣れてくると、ついつい余計なことを聞いてしまったり、別の人とは話が盛り上がったからといって、相手のタイプを考えずに一線を超えてしまう場合もあります。例えばプライベートに踏み込んだ内容を聞いたときに、踏み込み過ぎてしまって相手の顔色が変わったり。即座に別の話に切り替えたところ、元の温和な表情に戻ったなんて経験もありました。
大事に至ればインタビューの一企画どころか、その媒体自体との縁が切れかねない事態ですが、うまく軌道修正できて一命をとりとめた感じです。相手の顔色を「読む」ことに苦手意識を持っている方は、気のおけない仲間との会話で修行するのがいいですね。
インタビューの話が盛り上がりすぎて予定時間を過ぎてしまった
インタビュー実施前に終了時間をお伝えするのは、取材で相手に時間をいただく上でも基本なことですが、意外とできていない方が多いのも事実です。そして、時間をお伝えしていても、話に夢中になっていると終了予定時間を過ぎてしまうことも「インタビューあるある」といえます。
もし時間オーバーしているのにもっと話を聞きたかったり、「今まさに核心に触れている!」というときには、相手の様子を見ながら「お時間になりましたが、このままもう少しだけお話しを続けても大丈夫ですか?」と質問してみるといいでしょう。「あと10分くらい大丈夫ですよ」などと返事をいただけたら、まぁ20分は平気でしょう。
また、時間を気にするあまり、インタビュー中に時計をチラチラ見るのは褒められません。ひとつ質問が終わるごとに時間を確認するとか、視線を少しずらせば確認できる位置に、時計を置いておくなど対処を考えておきましょう。
インタビュー時間が余ってしまって焦る
同時に覚えておきたいのが、『いただいた時間を全部使うことが正義ではない』ということ。インタビューを受けることに承諾いただいて、撮影と併せて90分時間を空けてもらったとしても、90分を全部使わなくては失礼ということはありません。60分で終わるのであれば、残りの30分はお返しする。休憩いただくのも他の仕事をするのも一服するのも、インタビュイーの自由です。
わたし自身は、「取材が短く終わることもサービスのひとつ」と考えています。「時間が少々余りましたが、貴重なお話をたくさんいただけました。お忙しいと思いますので、これで取材は終了とさせていただきます」とお断りすれば、「30分も余っちゃってどうしてくれるんだ!」と怒られることはないでしょう。
物理的なインタビュー失敗例、音声が録音できていなかった
インタビューを実施する際、後から確認ができるように、ボイスレコーダーで録音することがあります。ライターとしてインタビュー取材をたくさん経験した人であれば、録音まわりでの失敗談は枚挙にいとまがないでしょう。ありがちなパターンですと……
- 録音ボタンを押していなかった
- レコーダーのバッテリーが切れた
- 録音していたのに保存を忘れた
- レコーダーの置き場所をミスって音声が聞き取れない
- そもそもレコーダーを持って行かなかった
- ばっちり録音できたのに、レコーダーを紛失した
- 録音できて紛失しなかったのに、取り込みミスでデータが消えた
まだありますかね。どのパターンにしても、思わず青ざめてしまう失敗例です。実際のところ、わたしは上記のすべてを経験しました。
取材対象者の方は、忙しいスケジュールの合間を縫って取材をお受けいただいたのにもかかわらず、再取材をお願いすることはできません。取材時にノートやパソコンでメモを取っていればなんとかなったかもしれませんが、話に夢中になってペンを握ることもしなかった……。しかも取材内容が専門領域の海外事情についてだったので、調べることもできませんし、そもそも取材内容を後から調べないといけないくらいの状況でした。駅のホームから通過列車に飛び込もうかなんてことが、頭の隅に過ぎるくらい焦ったのを思い出します。
結果として、記憶が新しいうちに覚えている情報をすべて書き出して、2時間後には記事を提出。品川駅のホームでパソコンを叩いてことなきをえましたけど。。。
一件以来、ボイスレコーダーのほかにスマホやiPadでも録音して、保険をかけるようにしました。イチロー選手は目覚ましを複数かけているそうですが、寝坊しないようにではなく、万が一、ひとつが壊れてしまっても大丈夫なように保険をかけていたそう。プロフェッショナルの習慣から、インタビュー録音の失敗逃れ術を学びました。
メモに夢中になりすぎてしまった
インタビュアーの中には、取材中にメモをとる派とそうでない派がいます。それぞれメリットとデメリットがありますが、メモをとっている間にやってしまいがちなのは、メモに夢中になりすぎてインタビューへの集中を欠いてしまうことです。
メモを取ることのメリットとして、
- レコーダーで録音できていなかったときも安心
- 大事なところをメモれば、レコーダーを聞き返す手間がない
- なんとなく、ちゃんと話を聞いていそうな雰囲気を醸し出せる
あたりがあります。ふんふん言いながらメモを取って、たまに二重線を引いたり丸をつけたり……本当に重要で記事に使う部分を、インタビュー中に選択しておけるとしたらメリットです。同時に、その行為だけで「お。ちゃんと話を聞いてくれてるな」という印象を抱かせることができるかもしれません。
対して、メモに夢中になってしまい、話の流れを遮ってしまう可能性も。インタビュイーの回答がひと段落ついたところで、次の質問であったり深掘りをしたいところなのに、書ききるまで話を途切れさせてしまうケースです。
対応策としては、メモを取りながらも相手の話に耳を傾け、優先順位を変えることでしょうか。同時に、メモを書くスピードをあげたり、自分だけわかればいい簡易文字であったり暗号のようなものを決めておけば、速記のようなことも可能です。パソコンでよく使う単語を、1文字打っただけで変換できるようにしておく感じですね。
ボイスレコーダー代わりにしていたスマホが震えて気まずくなった
インタビュー録音の保険としてスマホを使う場合、ひとつ注意したいことと、がんばっても気まずくなることがあります。サイレントモードにしています? インタビュー中に着信音が鳴り響いてしまうと、確実に話が止まってしまいます。それだけに止まらず、インタビュイーが不快に感じて、その後の取材がスムーズに進まない可能性も。
では、マナーモードにしておけば解決するのか。ダメなんです。バイブ機能がオフになっていなければ、着信やメッセージが来るたびに、スマホがブルブル音を立てます。机の上に出していたならば、振動音が部屋中に鳴り響いてしまうでしょう。マナーモードにするという気遣いは○ですが、相手も気を使ってくれて「どうぞ、どうぞ
。電話に出てください」なんて言われて赤っ恥というケースも。
インタビュー中にスマホで予備録音をするのならなお更、フライトモードにして電波を遮断しておくことをお勧めします。せっかく録音していたのに、着信や他アプリの挙動によって、録音アプリが落ちてしまうことも防げますので。
インタビュー取材に失敗はつきものだから、最大限の準備とリカバリー策を講じる
誰しも初めてはありますし、どれだけ経験を積んでいても、失敗することはあります。100%成功する方法や、絶対に失敗しない対策というものがない以上、できる限りの準備をして臨み、ミスがあっても慌てずにリカバリーできる方法を頭に叩き込んでおく。どんな失敗があるのかを理解しておいて、いざというときに慌てないだけでも、心に余裕ができて良いインタビューができると思いますよ。みなさんが良いインタビューを実施できますように。