成功するインタビュー取材記事の作り方と、目的、段取り、進め方のぜんぶ

成功するインタビュー取材記事の作り方と、目的、段取り、進め方のぜんぶ

ライターとして15年ほど仕事をしていますが、様々な記事ジャンルのなかでも、インタビュー記事の作成が好きです。本ブログを閲覧くださる諸氏のなかにも、インタビュー記事を得意としている人や、いつかは挑戦したいと企んでいるライターさんがいることでしょう。

インタビュー記事はナマモノなので、本当ならば、同じ記事は書けません。インタビューした人(インタビュアー)とインタビューされた人(インタビュイー)が異なれば、同じ題材でも違う内容になりますし、1年前に聞いた内容と今では返答が異なるでしょうし、来年も同じ思考や回答であるとは限りません。

インタビュー記事というアウトプットは、紙媒体なら廃刊・燃やすまで、Web媒体なら掲載を取り下げるまで同じ形で残ります。でも取材という行為はナマモノ。ライティング界のライブであり、格闘技であり戦争であり共創だと思うわけです。

数あるライティングワークのなかで、一番好きなインタビュー記事。取材記事とも言い換えられますが、何がそんなに楽しいのかを織り交ぜながら、取材記事・インタビュー記事のコツについて書いてみます。賛否両論あるでしょうが、わたしなりのインタビュー・取材術をご笑覧いただければ幸いです。

目次

インタビュー取材記事とは、その目的やメリット

そもそもインタビュー記事って何者なのか。一言でいうならば、『取材を通じて作成した文章』。つまりは取材記事ということです。まぁ、取材記事でもインタビュー記事でも、呼称はどちらでもいいこと。大切なのは、文章を作成するための情報やファクト(事実)を、人物に話を聞いたり現場に足を運んで目や鼻や耳や肌で感じること。取材をすることで、自分の主観だけではない情報をテキスト化することです。

クラウドソーシングで依頼される記事や、コンテンツマーケティングの一環で作成する辞書コンテンツ(『〜〜とは』の知りたいニーズに応える情報提供記事)以外は、そのほとんどが取材・インタビュー記事と考えられます。あ。もちろんブログやポエムなんかは違いますよ。本エントリも取材は行なっていません。とはいえ、わたしのライター人生でいうと、500名〜1,000名の間くらの人物に対して取材を実施してきました。そういう意味では、現場感があると自負していますし、取材によって蓄積された情報ですから、いわゆるコタツ記事の類とは違うとも考えられます。

インターネットで調べた記事は、取材記事ではないのか

クラウドソーシングで作成された記事を、取材記事・インタビュー記事ではないと書きましたが、物理的にクラウドソーシングサービスを利用して取材記事の依頼を受けたものを除いて、実際に取材を実施していない以上、取材記事ではありません。ただし、取材をしていないから質が低いとか内容が薄いとか事実誤認があるわけでもないですよね。

本エントリのように、実際の経験をもとに書かれた記事であれば、読む人にとっては確かな価値があるでしょう。また記事を書く前に、インターネットや書籍による充分なリサーチがあれば、紡ぎ出された記事に価値がないとは思えません。

たとえば、日用品の販売価格変化についての記事を書くとしましょう。

インタビュー取材で作成した記事の場合

ひとつは、近所のスーパーに出張っていって、主婦っぽい人を捕まえて一言二言の質問をする。「そうねぇ。最近は値段が高くなって困ってるのよぉ」「価格は据え置きなのに量が減っていたり、材質が悪くなってる気がするわ」「高校生の息子が二人もいるからか、最近はティッシュペーパーの消費が激しくてね。まったく何に使ってるのかしら(ニヤニヤ)」。こんな情報をもとにして、『主婦が悲鳴を上げる、原油コストの高騰』みたいな記事を書いたとしましょう。

これはこれで、きちんとカスタマーの声を拾っているので、事実があって現場感があります。主婦の悲壮な叫びが聞ければ、リアルな情報として記事の価値が高まる。れっきとした取材記事・インタビュー記事です。

綿密なリサーチで作成した記事の場合

もうひとつは、国会図書館で過去20年分くらいの新聞を引っ張り出しながら、スマホとタブレット端末とパソコンで同時検索をして、出てきた情報をA4ノートにぎっしり10ページ分ほどまとめて、帰宅してからノートを行ったり来たりで記事を書き上げる。情報収集に丸一日を費やして、記事は1時間ほどでいっきに書き上げて、1日寝かせて翌日に推敲を重ねて校了しました。

記事を書き上げるまでに会話をしたのは、国会図書館の受付にいた好みの女性だけ。彼女に対しては、なんとか電話番号かLINEを交換する隙を伺ったものの未達成で、唯一の会話が『登録利用制度』の質問ですから、これはインタビュー記事ではありません。

インタビュー取材の有無で記事の価値は決まらない

ではふたつの記事において、どちらのほうが価値が高いでしょうか。単純に記事の文字数や執筆時間で測ることはできません。記事を書く前段階の準備時間で測ることもできません。記事ですから、価値は読者が決めるしかないのですが、少なくともインタビューをしなかったという事実だけで、後者の記事は価値がないとは決められないわけです。

綿密なリサーチによって得られた情報にも、インタビュー取材とはまた別の価値が生まれます。リサーチによって作成された記事だとしても、内容次第で価値があるわけです。よって一概に、インタビュー取材を行なった記事は価値が高いとはいえませんし、インタビューを実施していないから無価値ともいえません。

インタビュー取材記事の目的とは

リサーチだけでも、ライターの頭のなかでの想像だけでも、記事を作成することはできます。ではどうして、わざわざ他人の時間を貰ってまでインタビュー取材を行なうのでしょうか。

インタビューを実施して記事を作成する目的はいくつもありますが、決定的なのは『第三者がもつ現在の意見』を記事の材料にできることでしょう。書籍や新聞、Webでリサーチをしても、第三者の考えなり意見を手にすることはできます。

ただし手に入る情報は、書こうとしている記事のための回答ではありませんし、いま現在の情報でもありません。よってインタビュー取材を行なう目的の最たるものは、現在の意見を得られることだと定義できます。

権威性を活かせば、インタビューの目的達成が近づく

先述したインタビュー取材の目的と重複する部分もありますが、もうひとつメリットや目的を挙げておきます。このエントリを読んでいる人は、わたしという人間をどれだけ知っているでしょうか。

『writers way』というブログを書いていること、ライターとして仕事をしているっぽいこと、書き振りから男性っぽく思えること、時に下ネタを交えること、ダジャレの頻度から年齢は中高年であること……くらい存じ上げていただけたら、それはもう幸甚なこと。

ただし文章やライターとしての知見を得るにあたり、パブ全開ではないわたしの記事だけでは、ちょっと信頼性に欠けますよね。本ブログでの情報を鵜呑みにして、「ライターっていうのはだね……」と語ってみたところで、「それ、自分の経験? 誰か有名なライターの意見?」と出典を突っ込まれると、答えにくいでしょう。

ところがわたしが、本名や出版書籍のタイトルや具体的に手がけた仕事を公開していたら、「●●●●●●ってベストセラーの本を出してる耐雪 梅花っていうライターが言ってた」と、胸を張って言い返せるはず。聞いた相手も、「そんな有名な人が言ってることなら本当だろう」と納得するわけです。

専門家へのインタビュー取材をするメリット具体例

もう少し具体的な例を挙げると、『先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症』についての記事を書くことになった場合を想定してください。

国内で数十名、世界中で200名程度の発症が認められる難病のひとつですが、あなたが医学部を卒業して発達障害やてんかん、遺伝子の病気について研究していたわけでもない限り、またご家族や親しい人に同病の患者さんがいない限り、書き出しから固まってしまうでしょう。そして慌てて、インターネットの世界にある情報をかき集めるわけです。

10時間にも及ぶネットサーフィンの末に集めた情報で記事を書くわけですが、果たしてその記事は正確なのか。もちろん専門知識を持っていなくても、リサーチによって事実をきちんと捕まえられる人がいることは否定しません。でもわたしの場合は無理。本エントリをご覧のあなたも、程度の違いはあれどわたし寄りでしょう? 多くの人の場合、どれだけWebページを閲覧したところで、書いてある内容が事実か虚偽かの判断はできないはずです。物によっては、単語の意味を理解できなかったり、文章を読み解くことも困難だと思われます。

その道の専門家に話を聞くことで、情報の権威性が増す

そこでインタビュー取材の価値を発揮するタイミング到来。先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症について研究している研究者もしくは治療に携わっている先生方に時間をもらい、自分が理解できるところまで質問を繰り返せば、専門知識こそ持たないまでも、専門家に解説してもらうことで、事実といえる文章が書けるわけです。

記事のどこかに、『肩書きやプロフィールをつけて専門家である●●氏に取材した』ことを記載すれば、読み手も信用してくれるでしょう。仮に事実と異なる内容があっても、専門家の意見を聞いて、理解を間違っていないのであれば、再度の取材を行なうことで、少なくともその専門家の解釈においては、正しい情報が得られるわけです。

念の為に断っておくと、専門家にインタビュー取材を実施したことによって、記事の内容が間違っていても許されるという話ではありません。

インタビューの内容次第で独自性の高い記事になる

インタビューは一度きりの真剣勝負というと格好つけすぎですが、少なくとも同じ日同じ時間に同じ相手と同じ話をすることはありえません。そのタイミングでしかない話を聞き出すことができれば、世の中のどこにもない独自コンテンツを作ることができるのです。

同じインタビュー対象者であっても、インタビューする側の切り口が違えば、これまでに話をしたことのない内容が飛び出すことも期待できます。つまり、超有名人でインタビュー記事があちこちのメディアに掲載されていようとも、はたまた著書をたくさん出している人だとしても、ここにしかないオリジナルの内容を文章化できるというわけ。

普段は出会えない人と話ができる

ちょっとミーハーな観点でインタビューのメリットを紹介すると、すっごく個人的な楽しみですし、インタビュー記事の本質とは関係ないのですが、著名人とか自分が会ってみたい人と話をする口実がつくれます。

仮にスポーツ雑誌のライターとしてインタビューをする場合、その場にアサインしてもらうことができれば、自分では話をするチャンスのなかった選手と会話ができます。会話と書いている時点で、仕事を忘れてミーハー丸出しですが。

またわたし自身の経験としては、ビジネス関係のメディアを立ち上げて編集長兼ライターとして記事を書いていました。メディアのコンセプトを決める権利がありましたし、どのビジネスパーソンに取材をするかも決めることができたんですね。

なので、自分の興味があるビジネスパーソンに片っ端からアポイントをとって、うまくいけば1時間から2時間の間も、自分の聞きたいことを質問しまくりました。自分の聞きたいことだけじゃ意味がないだろうと思われるかもしれませんが、そこはもちろんメディアコンセプトに沿った話であることを一応。

ただし苦労したのは、なんのコネクションもない相手に取材打診をしなきゃいけなかったこと。メールアドレスを見つけたりホームページから打診したり、SNSアカウントからダイレクトメッセージ送って、媒体特性や取材趣旨をお伝えした上で了承をもらうんです。

普通は既読スルーもしくは迷惑メールボックスに振り分けられていたでしょう。最初のうちは心が折れそうになったり、ファンをやめてやろうと思ったこともあります(すみません)。でもだんだんと、断られるのが当たり前と思えるようになって、アポイントをくださった方への感謝が増大しました。

メディアが少し売れてくると、お断りの率も減ってきたり、相手方から売り込んでもらえるようになったのも軽いショックでした。業界において影響力を少なからず発揮できたんだと嬉しい気持ちはありましたが、人の対応というか、最初はけんもほろろに断ったくせに、いつのまにかお願いをしてくるんだなって。

客観的な情報を届けられる

ちょっと真面目な方のインタビュー記事のメリットを最後に。もしかしたら一番の特徴でありメリットかもしれませんが、インタビューによって書かれた記事というのは、当然ですが第三者(インタビューアー)の切り口で質問をして、第三者の主観を交えながら記事が作成されます。

インタビュイーが自身の好きなことだけを書いたブログや自伝と違って、客観的な情報を読み手に届けられるわけです。物によってはインタビュー形式のパブ記事(広告記事)もありますが、それにしても、紹介される側の一方的なお話ではなく、きちんと世の中を理解して一過言もった編集者なりライターの意見とぶつかりながら、読者にとって有益な情報に加工されているはず。

またゴーストライターの仕事も該当しますが、話が苦手だったり文章が嫌いという著名人や人物の話においても、インタビュー記事になれば、上手に話しているように見えて読みやすい文章でアウトプットされるというメリットもありますね。

成功するインタビュー記事制作の方法

インタビュー記事のメリットについて説明したところで、次はいよいよ実践編というか、肝心要のインタビュー記事の作り方です。作り方、なのでライティング=文章を書くところまでが該当ですが、まずはインタビュー部分について考えてみましょう。

準備段階でインタビューは始まっている

当たり前の話でもあるのですが、インタビューする前に事前準備の段階があります。記事作成のためのインタビューは、インタビュイーと対面する前から始まっているのです。

インタビューを実施する前には、どんな準備をどの程度やるのがベストなのでしょうか。答えは、時間が許す限り、情報が得られる限りということなのですが、まずはできる範囲で挑戦してみてください。以下に順を追って、インタビュー当日までに準備する内容、観点を紹介します。

取材相手=インタビュイーの徹底調査

あまりに当たり前の話で恐縮ですが、インタビューさせていただく相手のことを調べることなくして、インタビュー準備は始まりません。この場合は、インタビューを依頼された編集者なりライターという立場のケースです。

わたしが以前にやっていたように、自分でインタビュー相手を選ぶ場合は、当然、対象者選定の時点である程度までの情報は調べていると思うので。

さて。釈迦に説法な可能性もありますが、なぜ事前に徹底調査をするのかを書いておきます。第一に、取材をさせていただく相手のことを知らないなんて、あまりに失礼ですよね。「仕事として依頼されたから来ました」なんて、真実ではあるんでしょうけど、そんなインタビュアーに本音を語りたくないですし、そもそも取材時間をあげたくなりません。

逆に下調べが深ければ深いほど、インタビュイーとしても気分がよくなるもの。「よくそこまで調べているね」「だったらこんな話もしようかな」という気持ちになるのが、人間というもの。

ひとつラジオで聞いたエピソードをご紹介しましょう。当時は日曜日の16時から東京FMでオンエアされていた、福山雅治さんの「スズキ トーキング エフエム」という番組がありました。番組内で福山さんがおっしゃっていたのは、

「事前にいろいろ調べてくれたら、それは当然うれしいことだ」「あの本を読んだんだなとか、あれをみたんだな、聞いたんだなとわかることもあるけど、それだけ自分い興味を持ってくれているんだから、悪い気持ちになるわけがないよね」

というような趣旨のことでした。インタビューを受けたことは何百回とあるであろう福山雅治さんですから、きっと同じような質問をされてヘキヘキとしたこともあるでしょう。それでも、調べてくれている=自分に興味を持ってくれていることに対して、悪い気がせず、いろいろ話してしまうとのこと。

やっぱり取材対象者についての下調べは、入念にしておくのが吉です。

インタビュー前の下調べのポイント8

インタビュー前に下調べが大事とわかっていても、初めての人や取材慣れしていなければ、何から調べていいか迷うところ。このあたりは最低限でもチェックしておきましょう、というポイントを8つご紹介します。

1:いまの仕事・活動内容を調べる

相手がビジネスパーソンなのかミュージシャンなのか、スポーツ選手なのか政治家なのか……条件によって変わりますが、確実に調べておきたいのは、現在はどんな活躍をしているのか。

ビジネスパーソンであれば、今はなんという会社で働いていて、どんな実績が出ているのか。会社のことについても当然調べますし、その方が所属する会社の競合についても同じだけの情報を得ておきたいところです。

また会社員とはいえ、仕事だけをしているとは限りません。もしかしたらボランティアをやっているかもしれませんし、マンション組合の組合長かもしれないし、お子さんのスポーツクラブでコーチをしているかもしれないし、ビジネス関連のコミュニティを立ち上げていたり入会しているかもしれません。

2:経歴や役職・役割について調べる

ビジネスパーソンに特化した話で展開しますが、スポーツ選手でもミュージシャンでも調べるポイントは同じだとご理解の上、読み進めてください。

インタビューさせていただく方が、今はどんな役割を担っているのか、なんという役職なのか、その役職になったのはいつからか。

また前職ではどんな会社でなんの仕事をしていたのかも知っておきたいところ。転職体験のインタビューでは、ここが肝になるので情報がない可能性も高いですが、なぜ今の会社にいるのかも、下調べできれば、取材時に掘り下げることが可能になります。

3:著書やブログ、他のインタビュー記事を調べる

これはある程度著名な人が対象になりますが、書籍を出版している人であれば、タイトルや出版年、大まかな内容までは把握しておきましょう。どのくらい売れたかも知っておけるといいですね。もちろんベストは、事前に著書を読んでおいて、自分なりの感想や質問も考えておきましょう。

一般人の方で書籍を出していない場合、もしかしたらブログを書いているかもしれないので、そちらも合わせてチェックしましょう。著名人のブログももちろん要チェックです。書籍は書いてから出版されるまで歳月がありますが、ブログには比較的最近の情報を投稿している可能性が高いですから。

4:Twitter・FacebookなどのSNSを調べる

多くの人が実践しているとは思いますが、Facebook、Twitter、Instagramのアカウントをお持ちの取材対象者であれば、確実にチェックしておきましょう。ちょっと機嫌を取っておきたければ、フォローしてもいいですね。また取材が終わって仲良くなれたら、Facebookで友達申請してしまうのも役得です。

SNSでは最近の投稿を確認するのはもちろん、どんな交友関係なのかも把握できます。共通の知り合いがいたらアイスブレイクになるかもしれませんし(ただし浅い付き合いの場合、寒い感じになるので注意)、取材対象者の興味の範囲が見えて来ます。

5:他のメディアに掲載されたインタビュー記事を調べる

あなたが取材をする以前に、他のメディアで取材記事が公開されている場合は、必ず隅から隅まで目を通しておきましょう。どんな質問をされて、どのような受け答えをしたかわかりますし、同じ質問を無駄に繰り返すこともなくなります。

場合によっては、「あの媒体でこういうことをおっしゃってましたが」と掘り下げて質問することもできます。

逆に避けたいのは、他のインタビューと同じ質問をしてしまうこと。インタビュイー自身が覚えている場合「あれ。以前も聞かれて答えたことがあるのにな」と不信感に繋がりますし、人によっては「●●ってやつで書いてあるから読んでおいて」と気難しい対応をされることも。

仮に同じ質問なのに初めてのように答えてくれた場合、実際の記事に書いてしまうことも発生します。すると読者としては、別のメディアで読んだ内容だと判断してそっと閉じるか、あなたの記事に対してネガティブな印象を持つこともあります。

6:関連するニュースを調べる

インタビュー対象者および勤務先のニュースについて、遡って3ヶ月分くらいは調べておくといいでしょう。イベント登壇とか上場したとか新サービスを出したとか、はたまた個人的な内容の結婚したとか出産したとか。

もしくは資金調達したとか提携したという話からも、今後の事業展開を聞くきっかけになります。ニュースをもとに話が聞けた場合、少なくとも報道がなされる以前には記事になっていない話が聞けることは間違いありません。

7:インタビュイー個人の考え方を調べる

1〜6の調査先とは別の話にもなりますが、いろいろな事がらに対して、インタビュイーがどのような思想であったり考え方を持っているかも確認しておきましょう。予想を立てておくと、インタビュー時の回答に戸惑ったり、次の質問が出なくて慌てる可能性が減って来ます。

また思っていたことと違えば、そこを掘り下げて聞いていくことで、インタビュイーに対して新しい発見が生まれて、さらに会話が広がり、読者にとって有益な記事をつくることに繋がります。

8:インタビュイーの意見に自分なりの見解を用意する

1〜6の調査で見えてきたインタビュイーの事実や考え方、発言に対して、インタビューをする自分の考え方を持っておきましょう。取材対象者に完全同意するのも良いですが、その場合は、どの意見に対して、どういう見解で同意したのかを自分の言葉で語れることが大事です。

逆に、インタビュイーとは違う考え方を持っていても、人の感じ方は自由なので戸惑うことはありません。場合によってはその意見を投げかけてみることで、共感を得られたり反対意見をもらえたり、会話が膨らんでいきます。ただし注意しておきたいのは、相手も人間であって自由な考えを持っています。人間性を否定するような質問の仕方は、気分を損ねられるだけでなく、インタビュアーの人間性も疑われてしまいますよ。

下調べのコツとポイント

事前調査が大事だとわかって、どんなことを調べるかが理解できても、どこまでやったら終わりなのかが迷いますよね。これはわたしが実践していることなので、必ずこうやれば取材前の下調べがうまくいくというものではないのですが……。ご自身に基準がなければ、まずは試しに乗っかってみてください。

事前調査にかける時間は、取材時間の2倍〜3倍が目やす

まずは時間で決める、下調べの深度です。調べ方や理解の仕方によって異なるので、一概に時間で決めるのはリスクがあります。なので、とりあえずわたしの平均的な下調べ時間について紹介しておきます。

ずばり、取材時間の2倍〜3倍を目安として、下調べに没頭しているんです。1時間の取材であれば2時間〜3時間。2時間時間をいただけるのなら、5時間くらいは下調べに費やしています。

さらに、同じ業界であったり種別の取材を繰り返している場合は、蓄積された知識であったり、別の取材で入手した知識もあります。ですので一概に2倍の下調べをしたらOKということはありませんが、目やすとして考えておいてください。

何かしらの決めをしないと、下調べに1週間みたいなことになって、どうにもならない低賃金の仕事になってしまうんですもの。まぁ最終的には、取材の目的と照らし合わせて、ここまで調べたら充分な質問ができて、記事を作成するのに必要な情報を得られると感じたところで終わることになります。

下調べの情報にとらわれ過ぎない

事前調査で手に入る情報は、すべて今現在よりも過去のことです。大事なのはインタビュイーが、最新の自分が何を思っているか、の部分。過去の情報にとらわれて「この人はこういう考えをしている」と決めつけてしまうと、本心のところであったり、心境が変化していく人間らしさの部分を見逃してしまいます。

あくまで大事なのは、そして読者が求めているのは、今現在の取材対象者が考えていることだったり取り組んでいる内容です。事前調査はいくらでもやればいいですし、過去の情報を知っておくのは大切。でも忘れてはいけないのは、人の考えや気持ちは変わっていくということ。

取材時の切り口や質問項目を考える

事前に下調べを徹底したら、次のステップが重要です。事前調査はあくまで、過去のインタビュイーに関する情報でしかありません。そのまま同じ内容を記事にすることを求められているなら、もうここから先を読む必要はないですし、なんならあなたが取材にいく必要もありません。

きっと、いや必ずや、記事作成を依頼した担当者やメディアの目的があります。目的にそう内容でインタビューを実施し、記事にすることがあなたに課せられた仕事であり報酬の対価。

調べた情報を元にしながら、掲載するメディアなりアウトプット媒体の目的に照らし合わせながら、必要な質問項目を考えましょう。このとき重要なのが、質問項目を羅列することから始めないこと。

  • 取材記事の掲載先のメディアはどれか
  • 取材記事を掲載する目的は何か
  • 取材記事の読者は誰か
  • 取材記事を読んだ人に期待する態度変容は
  • 新しい視点は何があるか

この5つのポイントを順番に考えてみましょう。取材した記事を掲載する先は何でしょうか。有名Webメディアなのか、雑誌なのか新聞なのか、もしかしたら記事ではなくて動画かもしれませんし、会社案内や入社案内かもしれませんね。

掲載先によっては、読者が記事にたどり着く方法やそのときの気持ちが異なります。SNSで拡散されていたからちょっと読んでみた。毎月定期購読している雑誌のお気に入りコーナーに載っていた。就職活動をしていて多くの企業から選んだ一社の入社案内に掲載されていた。

記事へのたどり着き方で、読み込む時の真剣さが違いますし、緊急度や必要性が変わってきます。

また掲載する目的は、企業のブランディングかもしれませんし、商品のPRかもしれませんし、インタビュイーの道楽かもしれませんし、集客力のある取材対象者を出すことで発行部数を伸ばしたいのかもしれません。

新商品のPRであれば、読者に期待するのは、店舗なりWerbサイトで調べて、購入してもらうこと。入社案内であれば志望度を高めてもらうこと。

また情報が氾濫している時代ですし、手の中にあるスマホひとつで、必要な情報をいくらでも調べることができます。あなたが下調べしたように、過去の記事であったり情報が誰でも手に入れられる中で、どのような切り口であれば、読者に新鮮で有益な情報を届けられるのでしょうか。

これらをしっかり考えて、箇条書きにでもして、そこから質問項目を検討していただきたいと思います。

質問項目はメモをしておく

切り口が決まったら、次に準備しておきたいのは、必ずヒアリングする質問項目を決めておくこと。記事の目的に応じて切り口を決めたら、その目的と切り口が達成できる質問項目を決めておきましょう。

もちろん取材は生き物なので、想定通りに話が展開することのほうが稀です。とはいえ自分のなかでゴールデンストーリーを決めておけば、取材が目的に沿っているのかどうか、軌道修正が必要なのかが判断できます。

また絶対に聞き漏らしてはいけないこともあります。取材が終わってから「あ。これを聞いていなかった」となるのは、やっぱりプロとして恥ずべきこと。あとで追加のヒアリングをすることも可能ですが、それが一般的すぎる内容だったら、「こいつ、聞き忘れたな」と見破られて信頼度が低下します。

MustとWantで取材メモを作成する

取材用のメモを作成するときのティップスをひとつ紹介します。まずは質問項目を書き出してリストを作成しましょう。この段階では、重要度や質問する順番など気にしないでOKですし、本当に必要な質問かも精査はあとでやります。

もう質問することがない、と思えるまで項目を出し切ったら、二つの観点で分けます。ひとつは、切り口に関連する絶対に外せない忘れるわけにいかない質問です(=Must)。これを作成したら、残りは個人的に聞いてみたいことだったり、設定しているテーマとは関係ないかもしれないけど……という質問(=Want)が残ったはず。

いうまでもなく、Mustの質問は絶対に忘れないように優先順位を高く、時間を余らせそうだったり、切り口に関連が出てきそうであればWantの質問を投げかけてみましょう。

事前質問が可能であればメールで送る

メモの作成と同時に挑戦してみたいのが、インtナビュイーに対して事前の質問を送っておくこと。取材を打診するメールなりで、どのような趣旨でどんな質問をするかを送っているケースもありますが、取材実施日まで時間があるようでしたら、具体的な質問を前もって送っておくことをおすすめします。

運が良ければ回答をもらえることもありますし、目を通していただけるだけで、当日の取材がスムーズに進みます。ありがたいことに事前質問の回答をいただけたのならば、取材対象者に対して理解が進むことに加えて、質問内容を精査したり深掘りしておくチャンスです。

記事の目的に最適なチームを編成する

取材の事前準備の仕上げとして、当日の段取りを考えましょう。インタビュイーと挨拶をして、アイスブレイクをしてから質問を始めるのか、最初に写真撮影をするのか、もしくは趣旨説明からやりなおすのか。

ここで重要なのが、あなたの他に必要なメンバーをアサインすることです。あなたが取材から執筆、写真撮影まで担当するのであれば、自分でやりやすい方法に乗っ取って取材を進めたらOKです。

自分以外のライターやフォトグラファーとチームを組むのであれば、それぞれが今回の取材・記事の趣旨にあっているかを確認しましょう。カメラマンと一口に言っても、ブツ撮りが得意な人がいれば、人物撮影が得意な人もいます。人物撮影が得意と言っても、撮影スタジオで写真撮影専門のときに活躍している人もいるでしょう。

今回の主役は取材対象者であり、彼彼女の発言内容です。スタジオセットを使って撮影するのでなければ、取材中の姿を数カット撮影して、アイキャッチ用に一枚、目線をもらった写真を撮影することになるでしょう。

インタビューアーの質問を邪魔せず、インタビュイーの回答を遮らず、自然な感じで撮影するには、それなりのテクニックが必要です。

またライターを別にアサインする場合、できることなら取材に同席してもらうのが理想です。ただし音声テープを渡して記事作成だけお願いする契約であれば、ライターも時間給で考えたときに、取材への同席はしないことがあります。

ライターが取材に同席しないのであれば、きちんと音声を録音させていただいて、取材のときの臨場感がしっかり伝わるように準備しましょう。

取材に欠かせないツール・アイテム

インタビュー取材の事前準備、仕上げは当日に向けて持っていく道具をまとめてみました。あなたのインタビュースタイルや役割によって変動はありますが、一般的にこれだけ揃えておけば大丈夫、というものを網羅しています。

企画書、媒体資料(紙媒体であれば見本誌を含む)

企画書や媒体資料の類は、事前に送っていることもあります。でも当日の取材前オリエン時に、媒体資料や見本誌を見せながら話をしたほうが、イメージを掴んでもらいやすくなるため持っていきましょう。

メモ帳、筆記用具(色付きのペンも含む)

メモ帳については、音声を録音するからいらないと考える人もいますが、相手によってはメモを取っていることでそれらしく見えてくれる場合や、いちいち音声を聞き返さなくても重要な部分をメモっておくなどの使い方ができます。

紙のメモ帳を使わずに、パソコンやiPadを利用する人がいると思います。絶対にNGとはいいませんが、これも相手によっては「パソコンをいじりながらなんて失礼だ」と感じられる場合があります。TPOや相手に合わせたツールを選択しましょう。

ボイスレコーダー

音声を取らずに、手元のメモだけで勝負するという編集者やライターの方々もいますが、念のために音声を録音しておくことをおすすめします。すぐに記事執筆に取りかかれないときなど、当時の臨場感を確認することに役立ちますし、聞き漏らしてしまったときにも助かります。

また、完全な書き起こしを依頼されることもあるので、すべてをメモ帳に頼るよりも、保険の意味も含めて録音しておきたいところです。

ボイスレコーダーはそれほど高価なものでなくても大丈夫。数千円〜1万円も出したら充分すぎる逸品が手に入ります。使用前にバッテリーが満タンであることを確認しておく、もしくは交換用の電池を用意しておくのも忘れずに。

時計

取材は依頼した時間内に終わらせるのが最低限のマナー。とはいえ、普段は時計を持っていない人はスマホで時間を確認してますよね。取材中にスマホをチェックするのは失礼なので、腕時計なりを用意しておきましょう。

もっともスマホでなかったとしても、あからさまに時計をチラチラ見ると、それはそれで失礼にあたります。「この人は時間ばかり気にしてるけど、早く帰りたいのかな」と思われたら、必要な情報が聞けないばかりか、無駄な時間を過ごしたと思われて最悪です。

一眼レフカメラ(ミラーレス含む)

あなたが取材時に撮影まで担当するかわかりませんが、カメラマンをアサインしていないのであれば、写真撮影まで実施する必要があります(写真はいらないという条件であれば別の話)。

いまどきはスマホでも綺麗な写真が撮影できます。でも撮影される側としては複雑な気持ち。せっかく時間をつくって取材を受けているのに、写真がスマホで撮影なんて……。

写真で生計を立てているカメラマンのように、高価な機材を取り揃える必要はありません。エントリークラスの機材でかまいませんので、一眼レフカメラを持っていきましょう。取材対象者にしてみれば、きちんとしたカメラで撮影してもらえていることで、多少なりともプラスの気持ちになるでしょう。

ビデオカメラ

実は取材においてもっとも便利なツールが、ビデオカメラです。音声を録音することができますし、映像から写真を切り出すことも可能。また、音声だけではなく本人の顔も映るので、発言中にどんな表情だったのかまで振り返れます。

もっとも取材中にビデオカメラを回しっぱなしにすると、インタビュイーが緊張するかもしれません。そのあたりは、相手の慣れや性格で判断するか、遠くの方からこっそい狙っておきましょう。どちらにしても、撮影することの許諾を忘れずに。

三脚、脚立

ビデオにしろカメラにしろ、ブレのないクリアな絵を残すなら、三脚があると嬉しいところ。また高い位置からの写真が欲しいとなれば、脚立があると重宝します。ただしこれらはかさばる機材なので、必要に応じて判断してください。

スーツ、ネクタイ、革靴

わたし自身、普段はジーパンにTシャツみたいな格好で仕事をしています。来客などもラフな服装で対応することが多いのですが……。取材時は相手によって服装を変更できるよう、いつも準備をしておきましょう。会社員の方であれば、スーツやジャケット、シャツや革靴など一式を置いとくのも手。

取材対象者が社長さんであったり、著名人であったり、礼節に厳しい人であれば、ラフな格好で訪問すること自体がマイナス評価となります。気分を概して話をしてくれなかったり、追い返されてしまっては元も子もありません。

スマートフォン(録音アプリ入り)

ボイスレコーダーを持っていけば、スマホで録音する必要はなさそうに思います。でも実は、不測の事態に備えてスマホの録音アプリを回しておくと安心です。

わたしの過去の経験ですが、ボイスレコーダーが録音状態になっておらず、音声がまったく取れていないことがありました。相手は米国に住んでいる方で、日本にいらっしゃったタイミングで取材をさせていただいたのです。超有名企業の敏腕エンジニアで、話の内容がかなり専門的。わからないところはあとで調べようと思っていたものの、わからないところがわからない事態に……

ふたつの機材で録音しておけば、両方ともだめになる確率は低いでしょう。もちろん、それぞれの機械が作動していることを確認してから、取材をスタートするのが鉄則です。

取材当日の使えるノウハウ

事前の準備が万端で、いよいよ取材当日を迎えるとき。もうやり残したことはないはずですので、あとはコンテンツ作成に必要な素材を集めるだけ。この段階であれこれ悩んでも仕方ありませんから、わたしからお伝えするのは、ちょっと使える鉄板のノウハウをご紹介します。

取材のスタートは挨拶から

当然ですが、取材はじめは挨拶から入ります。このとき、少々オーバーなくらい丁寧に、「会えて嬉しい」を伝えましょう。名刺交換をするのであれば、ハキハキと自分の名前を伝えて、相手の名前もしっかり呼んで、「お話を伺えるのを楽しみにしていました」を伝える。

「なんだか賑やかな人だなぁ」とか「声がでかいな」とか思われるかもしれませんが、かまいやしません。またわたしは比較的ガタイが良い方なのですが、最初の挨拶は深々とお辞儀をしています。これはこれで「ごっつい人だけど、やたらと謙虚だな」と感じてもらえたらOK。第一印象を一言目で大きく覆しておきましょう。

取材がうまくいくキラーワードを用意しておく

もうひとつ、わたしが取材の最初にやっていることは、あるキラーワードを伝えること。これをしておくと、実は事前準備が不足していてもごまかしが効くかもしれません。

「いろいろ調べて、記事なども拝見してきました。ただ読者の方がどこまで理解しているか不明ですので、今日は基本的なことも含めて、改めて質問させていただきます」と、知識不足はわざとですよ、を伝えておく。

事前準備に時間をかけていても、何かしらの抜け漏れがあることでしょう。それが超基礎の話だったとして、「そんなことも知らないのか」と思われないように釘を刺しておくのです。

オーバーすぎるリアクションでOK

取材がはじまったら、相手の話に対してオーバーすぎるほどリアクションをします。「へぇ」「なるほど」「すごいですね」あたりは、ついつい相槌的に使ってしまうワードです。これらが悪いとは言いませんが、あまりにありきたり。

そこでちょっと変わった相槌や合いの手を用意しておきましょう。例を挙げると「え。それは知らなかったなぁ」「それ面白いですね!」「わ。そこ興味深いのでもう少し聞かせてください」「なんで、なんで。どうしてですか?」とか。

これらは自由に発言したらいいのですが、常に「なるほど」「なるほど」「なるほど〜」を連発するより、きちんと話を聞いている雰囲気がでます。

またリアクションをオーバーにと書きましたが、ここもさじ加減が大切。ときには声のボリュームを落としてみたり、トーンを変えてみる。声の表情、相槌の表情を豊かにしておくと、相手も乗りやすくなってくれますよ。

取材中はインタビュイーの時間

取材が楽しくなってきて、ついついインタビュアーがしゃべり過ぎてしまうケースがあります。でも大事なのは、インタビュイーから話をしてもらうこと。鉄則としてインタビュー中は、取材対象者のための時間だということを肝に銘じましょう。

「いまから1時間、あなたが好きにしゃべって良い時間です。基本的に私は相槌や簡単な質問しかしません。どうぞお好きにしゃべり続けてください」という意識です。実際にそんなことは伝えませんけどね。

同時に意識したいのが、人間の時間は1日24時間と決められていること。インタビュイーにしてみても、貴重な1/24なりの時間をくださっています。無駄話であったり、記事に使わない話ばかりで時間を浪費するのは失礼。

仮に取材時間が短くなってしまっても、必要な情報が取得できればそれでかまわないのです。ちょっと気まずいかなと思うのであれば、以下のフレーズで締めてみてください。

「貴重なお話をたくさんいただけました。予定より時間が残っていますが、早めに終わることもサービスだと思っていますので。他に伝えておかないと間違ったことを書かれそうというというのがなければ、こちらで取材終了とさせていただきます」

早く終わったのは、話がつまらなかったからじゃないですよ、というのを伝えつつ、まだ時間があるので言い残したことがあればどうぞ、というのも伝える。「1時間って言ってたのに45分で終わるなんて、私の話がつまらなかったのかな」と思われない配慮をしつつ、1分1秒でも、貴重な時間を相手にお戻ししましょう。

「では、浮いた時間は休憩にでも使ってください。毎日、お忙しいと思いますので」と言って最高のスマイルで締めくくる。こんなテクニックも、ご自身に合わせた形で持っておくと気持ちが楽になりますよ。

回答に困られても気にしない

インタビュー中に自分のした質問に対して、相手が回答に困ってしまうことがあるかもしれません。取材者としては内心ひやひやする時間ですが、必ずしも失敗ではないと考えられます。

これはわたしが取材をするなかで、会心の取材だったと思える瞬間にも通じるのですが、回答に窮しているときはふたつのパターンがあります。

質問がチープ過ぎて答えに困る

ひとつは、インタビュアーとしての実力不足に反省が必要ですが、質問した内容があまりに稚拙であったり、意図がわからなかったりして、本当に答えられない場合です。

「こいつ、そんなことも知らないのか」とか「え。その質問はいまする?」「え??どういう意味?何を質問したの?」という反応をされたときは、こちらの質問がまずかったとき。すぐにわかりやすい質問で聞き直すか、話を変えて取材時間に戻りましょう。

今まで考えていなかったので答えに困る

相手が答えに窮していても、これは良い質問だ! と思えるパターンがあります。できれば取材のたびに、質問のたびにこの時間を過ごしたいと思うのですが。

こちらの質問の意図は伝わっているのに、相手が答えられない場合。それは、普段から考えていなかったことで、そういえばどう思ってるんだろう? とインタビュイーが自分自身に問いかけている場合です。

「あー、なるほど。それはどうしてかなー?」「あー、考えたことなかったですね」とかの反応がきたらしめたもの。「突然の質問ですみません。ちょっと待ちますので、思ったことを口に出してみてください」とかなんとか言って、頭の中を整理してもらったり、思いつきを発言してもらい、それを一緒にまとめていく作業を楽しめます。

取材の極意まとめ

結局、このまとめ記事を利用してわたしが伝えたかったのは、取材は楽しいですよ、ということでした。予想外の出来事があるのも取材の醍醐味ですし、相手を怒らせてしまったとしても、それはそれで人生の小さなハプニング。別に命まではとられないことがほとんどですから、あなた自身が取材を楽しみましょう。

そして最後に紹介したような、相手がいままで考えていなかったから答えに困る質問をみつけだして、新しいインタビュイーの一面を覗くのも楽しいものです。

取材後に相手から「今日は自分でも新しい発見がありました」とか「今までのことを振り返る良い機会になりました」などとお礼を言ってもらえたら、相手に取材時間をいただいたお返しが、少なからずできたということ。

感謝と謙虚さと楽しむ姿勢を忘れなければ、きっと素敵な取材時間と記事になるはずです。インタビュアーもインタビュイーにとっても、素敵な取材時間となりますように。