インタビューは、コンテンツのクオリティを簡単にアップさせる方法のひとつになると考えています。なぜなら、インタビュアー×インタビュイー×質問内容×ライティング×編集で、確実にオリジナル記事がつくれて、クオリティが高まるから。
あ。もちろん、オリジナルのインタビュー記事だからといって、100%クオリティが高いとは限りませんよ。取材やライティングについては、基本的なことはできているという前提です。
私自身、インタビュー記事をつくるのが好きで、よく受けさせていただきます。記事をつくることだけでなく、インタビューそのものの時間が、また楽しいんです。だからインタビューの時間は、私のもの。他の人に邪魔して欲しくないなと思っています。
でも。ライティングは外注するにしても、インタビュー記事を作成するなら、ぜひクライアント(発注者)も同行してもらいたいです。個人的には、同行するのは良しとしても、口を挟むのは遠慮いただきたいんですが。
「インタビューなんてしたことがない」という人でも大丈夫。5つのことを実践するだけで、より充実したインタビューと、よりクオリティの高い成果物が手に入ります。インタビュー対象者・ライターから、「この人はデキる!」と評価される取材同行のポイントです。
インタビューは、誰が何のために実施するのか
質の高いコンテンツを作成するためには、ライターの腕だけではなく、情報の独自性や鮮度も重要。それを担保するために行なうのがインタビューです。
紙で出版される刊行物の場合、インタビューはライター単独で行なうのではなく、編集者も同行することが一般的です。言うまでもなく、ライターは“書く”専門家であり、インタビューに精通している場合には“聞き出す”専門家でもあります。しかし、編集者(もしくはクライアント)には、編集者独自の視点がありますから、よりよいインタビューになる可能性が高いのです。
テープ起こしを読んで確認すればいいという意見もあるでしょうが、その場の臨場感にはかないません。もしも聞きもらしがあれば、スケジュールに影響も出ます。そして、その場で話を聞いて、「今の話をもっと突っ込んで聞くことができれば、ほかにはないコンテンツになりそうだ」という判断は、ライターよりもクライアントのほうが下しやすいのです。
では、どのようなことに気をつけてインタビューに臨めばいいのでしょうか。5つのポイントに絞って解説します。
取材同行のポイント1|質問案を作成する
インタビュイーから聞き出したい話を事前に考えておきましょう。ライターはクライアントの要望をもとに独自で質問案を作成するはずですから、ライターの質問案との擦り合わせも必要です。「こんな話を聞き出したい」というクライアントの意向が、よりライターに伝わりやすくなります。
質問案の中に「少し本筋からずれるかもしれないが、時間が許すならぜひとも聞きたい」というようなものも用意しておくといいでしょう。
一般的にインタビュイーは、ライターの反応以上に、クライアントの反応を気にするものです。「この人に話を聞きたい」「面白い話をしてくれるに違いない」と自分を選んでくれたのはクライアント。ライターが目を輝かせて話を聞いていても、クライアントが上の空であれば、インタビュイーもやる気を失います。
最低限必要なことを全部聞いたうえで、「もしよろしければ……」と、さらに新しい話題をクライアントが切り出すとどうでしょう。「この人は自分に対して、こんなに興味を持ってくれているんだ」と感じたインタビュイーは、さらに気分が乗ってきます。ほかでは出していない最新の情報を、惜しげもなく披露してくれるかもしれません。
取材同行のポイント2|レコーダーを用意する
万が一に備え、ライターのものだけでなく、自分で用意した予備のボイスレコーダーも回しておいたほうがいいでしょう。インタビュイーにも「自分が話すことの価値をちゃんと理解して、大事にしてくれている」と感じてもらえます。
だだし、いきなりレコーダーを机の上に置いて、録音開始というのはNGです。「録音させていただいてよろしいですか」と必ず一言断りましょう。
最近はスマホでも高音質での録音はできますが、インタビュイーが顔をしかめる可能性もあります。安いものであれば3000円以下で購入できますし、きちんとボイスレコーダーを用意しましょう。
取材同行のポイント3|メモを取る
取材中にはメモを取りましょう。事前にライターと作成した質問案に余白を多く取っておいて、そこに書き込んでいくというやり方もあります。
取材メモは、聞きもらしがないか確認するうえでも重要ですが、ライターとコンテンツ内容の擦り合わせを行なうときにも威力を発揮します。
自分にとってインパクトのあったことは大きく目立つように書く、というようにルールを決めておけば、コンテンツ内で取り上げるべきトピックがひと目で確認できますし、事前に想定していた方向性よりも、別の切り口のほうが面白そうだと気づくきっかけにもなります。
納品された原稿とメモを見比べてみて、こぼれ落ちている要素があれば「この話はこんな点で面白いから、ぜひ入れてほしい」という具合にライターへの指示も明確になります。
取材同行のポイント4|メモは最低限でいい
取材メモを取るといっても、インタビュイーの発言を逐一書く必要はありません。取材慣れしてる人と慣れていない人のメモを見比べると、たいていの場合、取材慣れしている人のほうが、文字量が少ないものです。というのも、慣れている人は、何をメモしておけばあとの工程が楽になるかがわかっているからです。
では、何をメモすべきかというと、「面白いと思ったこと」「事前に知らなかったこと」「そのインタビュイーから聞き出せるとは予想していなかったこと」。最低でもこの3点を箇条書きにしておけば、あとから困ることはありません。
正確に記録を残したいという気持ちもわかりますが、録音したものを聞き返したり、テープ起こしを参照することはあとでいくらでも可能です。手元に目線を落とすより、話し手を見て、「もっと突っ込んで話を聞いてほしそうだな」「まだまだ話し足りなさそうだな」といったような雰囲気を読み取ることのほうが重要です。
取材同行のポイント5|「知ってます」は禁句
ライターやクライアントは、取材前に必要な資料に目を通してからインタビューに臨みます。そうすると、必然的にインタビュイーの話の中に、自分が知っていることも交じることになります。
しかし、他愛もない世間話ならいざしらず、相手が話している最中に「そのお話については知っています」と言ってしまうと、インタビューが台無しになる危険性があります。インタビュイーのやる気をそぐだけではありません。インタビュイーは、あなたにとって既知の話題に続けて、予想もしなかった面白い話をしてくれるかもしれないのです。また、話題が既知のものであったとしても、その人ならではの話し方や、説明の仕方は新たな知見をもたらしてくれることもあります。
取材にあたって必要な前提情報は頭に入れたうえで、まっさらな気持ちでインタビュイーの話を聞くことに努めましょう。
時間的な制限などで、どうしてもインタビュイーの話を区切る必要があるときは、“打ち切る”のではなく、より聞き出したい内容に“誘導する”という心構えが重要です。
取材同行のポイント|まとめ
同じライターと何度か取材に赴いていると、「このライターなら、インタビューも完全に任せられる」と感じることがあるかもしれません。そんなときに、ライターにすべて任せ、自分は自分にしかできないことをやるというのも、もちろん悪いことではありません。
ただ、インタビューは単に“話を聞く”だけの場ではなく、“関係を築く”場でもあります。直接の面識がない状態でインタビューを申し込んだ場合はもちろんのこと、インタビュイーが旧知の仲であっても、これまで知らなかったようなことを、インタビューで初めて聞くということは往々にしてありますし、クライアントの熱意が直接伝わることで、「その話だったら、こんな人も紹介できます」と、思いもよらない新たなつながりが生まれることもあります。
さらに、インタビューに同行するということはライターと行動をともにすることでもあります。ライターの心情を理解する機会が増えることで、ほかのライターに外注するときにも、これまで以上に仕事をスムーズに進めることが可能になるのです。