サラリーマンは知らないと危険な、副業前の基礎知識

サラリーマンは知らないと危険な、副業前の基礎知識

最近、なにかと話題になっている副業について書いてみます。正社員として雇われている人よりも、フリーランスや個人事業主として活躍している諸氏が多いライターという職業。独立や起業の取っ掛かりとして、副業として他社の仕事を手がけることも多いのです。

かく言うわたしも、社外の方々から文章作成を依頼されることがしばしば。少額ながら報酬をいただくもので、これも副業に含まれるのでしょう。

ブームともいえる盛り上がりを見せる副業について、その理由やメリット・デメリット、会社側の意見・副業者の意見、副業の方法などをまとめてみました。非常に、異常に長文となってしまったので、記事を分割することにしました(2018年6月9日)。

副業っていったいなんだ?

副業という言葉を、新聞やニュースで見かける機会が増えたように思います。週刊誌などゴシップ系の雑誌で、数カ月に一度くらい特集が組まれている印象も。

こちらは、ある副業サービスのツイートですが、女性セブンも副業に関する特集を組む時代なんですね。上戸彩さんが副業をしていると思うと、ちょっとやってみようかと思います。

みなさんの友人・知人にも、副業でお小遣い稼ぎをしている人はいませんか? わたし自身も、副業の要領で記事を書いて収入を得ることがあります。ちょっとした特技があると、「会社として雇うほどではないけど、単発で仕事をお願いしたい」という声がかかることがしばしば。

わたしの場合はライティング方面が中心ですが、世の中にはもっとたくさんの種類の副業が存在するようです。草野球チームのメンツが足りなくて、「一試合だけ出てくれ」とお金をもらって頼まれた場合、これもきっと副業になる……んですかね。

どれが副業にあたるのか

書き始めて気が付いたのですが、副業という言葉の定義がちょっと曖昧でした。まずは言葉の意味を確認してみましょう。副業ってなんなんだ!?

副業(ふくぎょう)は収入を得るために携わる本業以外の仕事を指す。 兼業、サイドビジネスともよばれる。 副業は就労形態によって、アルバイト(常用)、日雇い派遣、在宅ビジネス、内職などに分類される。 また、収入形態によって給料収入、事業収入、雑収入に分類される。
引用:Wikipedia

本業以外で収入を得ることが副業ならば、草野球のピンチヒッターも該当する可能性がありそうです。ただ、『本業以外の仕事を指す』ということなので、スポットで入る草野球の試合は仕事なのか? と考えると悩みますね。

考えすぎると深みにはまりそうなので、いったん『本業以外で収入を得ることを副業という』と定義しておきましょう。本業ってなんだ? という疑問もついてまわるのですが、主従の関係にある仕事、『費やす時間が長い方を本業と呼ぶ』と決めてしまいます。

副業とは、本業の他に収入を得る手段。会社員であれば、毎月の給料とは別に収入を得ることを指します。

収入の定義は貨幣を受け取ること

ちなみに収入とは、『何かの対価として受け取る現金などの貨幣』を意味するので、金券であったりAmazonギフト券やApp Store & iTunes ギフトカードの類をもらう場合は、副業には当てはめないことにします。

引越しの手伝いをして昼飯をご馳走になるケースも、やはり副業ではありません。ありさんとかアートとかの引越し屋でアルバイトをする場合は、しっかり貨幣を受け取るので副業ですね。

また収入の受け取り方は、銀行振込も現金手渡しも問わないということでどうでしょう。お小遣い制のお父さんであれば、現金を手渡しされたほうがありがたいかもしれませんね。

主婦の場合、副業の定義は?

主婦の副業ところで主婦や主夫といった、勤めに出ておらず家事や育児を担う場合は、副業という考え方が存在するのでしょうか。

先に取り決めた定義に従うならば、主婦や主夫に副業という概念は存在しないことになります。本業という収入を得る手段がないわけですから。

会社員の夫と同じ副業の手段で、主婦の妻が収入を得た場合はどうしたら良いのでしょうか。他に収入を得ていないのですから、本業という扱いが妥当な気がします。

しかし昨今の社会情勢や世論を考えると、家事や育児は収入が発生しないまでも、会社勤めと同等以上の価値があると断定しておくのが無難。

よって主婦の場合、家事や育児が本業であり、なんらかの収入を得る手段を副業と呼んでしまいましょう。

ただし本業と副業の時間配分については、会社員と同じように、本業に比重があることを前提にします。家事・育児をまったくしていない、もしくは1日2時間程度の主婦が、2時間以上かけて収入を得ているのでしたら、それを副業とは呼ばないというルールで。

法律上の副業の定義

本稿における副業の定義は終わりましたが、念のため法律上の副業についても紹介しておきます。

と宣言しながら恐縮ですが、どうやら副業を定義する法律は存在しません。近しいものというか、知識として入れておきたいのが所得税法における所得の種類でしょうか。

所得税法(しょとくぜいほう、昭和40年3月31日法律第33号)は、広義の所得に対する税のうち、個人の所得に対する税金について定めた日本の法律。所得税法(昭和22年法律第27号)を全部改正して制定された。引用:Wikipedia

個人の所得に対する税金の定めである所得税法によると、所得の種類というものが10に分類されています。つまり課税される所得の手段は、10種類ありますよということです。

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

これが所得の種類。会社員であれば毎月の給料は、給与所得に該当します。では副業の所得は、どれに分類されるのでしょうか。

答えは『雑所得』か『事業所得』のどちらかです。それぞれの所得の違いについても、少しだけ見ておきましょう。

副業の収入は、なに所得?

副業で稼ぐ実はやっかいなことに、副業の収入が『雑所得』と『事業所得』のどちらに該当するのかは、明確な基準が設けられていません。仕方がないので、言葉の定義から推察してみましょう。

正確な定義や、自分の所得がどちらに該当するかが知りたい場合は、税理士などの専門家に相談してください。「この記事を読んで判断した」と言われても、まったく責任はとれませんので。

まず事業所得から。言葉が表している通り、事業を営んだ結果で得られた所得を指します。事業と言い張るには、何かの条件があるのでしょうか。

一般的には、継続した期間・安定した収入・儲かる可能性がる・相当時間を費やしている・職業として認知されている、といった条件があるとされています。

職業として認知されているという条件からすると、ライターなどの物書き業であれば、事業所得に該当してきそうです。あとは、継続や安定といった条件を満たすことが必要になりますね。

もう少し正確な基準をということで、あるニュースサイトの情報を引っ張ってきました。

事業所得としての副業は、営利性・有償性・継続性・反復性があるか、精神的あるいは肉体的労力の程度や人的・物的設備があるか、また、社会的地位・生活の状況などを考慮して判断します。加えて、その事業が生活の糧となるものか、一般的に職業として認知できるかも判断材料となります。(国税局)
引用:マイナビニュース

話が逸れてしまいますが、上記の情報ソース『マイナビニュース』さんのように、きちんとしかるべき機関に裏どりをしている、これこそがライターの仕事ですよね。少し前に騒がれたキュレーションメディアのような、いわゆるコピペではつくれない記事です。

話を戻すと、国税局の発言を解釈するに、

  • 相当程度の期間継続して安定的な収入が得られる
  • 儲かる可能性が充分にある
  • 相当な時間を割いて取り組んでいる
  • 人的・物的な設備が整っている
  • 副業の収入が消えると生活に影響が出る
  • 職業として認知されている

という条件が見えてきます。一言で片付けてしまうのもどうかと思いますが、『プライドを持って仕事をしている』ということですね。

ちなみにクラウド会計ソフトのfreeeによると、

たとえば、文筆業を営む人以外が、原稿料を受け取った場合には雑所得です。
引用:freee 『確定申告の基礎』より

とのことで、ライター業を営んでいない人の場合は、原稿執筆による収入があっても、事業所得とはいえないそうです。

一方で雑所得とは、先述した所得の10分類のうち、雑所得以外の9分類に該当しない物を指します。いわゆる『その他』というやつですね。「規定から外れるものが出てくるから、雑所得っていう、なんでも放り込める枠をつくっておこう」と考えられた分類です。

副業の所得は、事業所得がおトク?

副業で得た収入は、事業所得か雑所得に 分類されるわけですが、「まぁ、どっちでもいいかな。よくわからんし……」と思うのが普通の反応です。

でも、本当にどっちでも良いのでしょうか。年間の副業収入が20万円を上回るという前提で、全力で事業所得をお勧めします。その理由は、事業所得の方が得をする可能性が高いから。どんなトクがあるかというと……

最大65万円の青色申告特別控除が受けられる

副業で得た収入を事業所得として計上すると、青色申告の際に最大で65万円の青色申告特別控除を受けることができます。

あおいろしんこくとくべつ……とか言われても、勉強していない人にはよくわかりませんよね。超絶平たくいうと、副業での所得を65万円まで少なく申告できるんです。残念ながら、65万円もらえるわけではありません。

乗りかかった船なので、参考数字を出してみますね。

副業の事業で得た総収入が500万円だったとしましょう。副業で500万円っていうのが無茶な話ですが、そこは少しでも見栄を張りたいというか、青色申告特別控除の威力を知って欲しいからです。

そして経費が230万円としましょう。副業の職種がライターだとして、パソコンを書いますよね。できれば高性能で、軽くてバッテリーが長持ちするやつが。取材記事を書くのでテープレコーダーが必要です。できればコンパクトで良い音声で拾って聞けるやつが。写真撮影もすることになったので、カメラが必要になりました。せっかくなのでフルサイズの一眼レフにして、レンズは広角とズームを1本ずつ。移動するのに交通費が必要ですよね。しかも遠方だったので新幹線に乗りますし、宿泊も必要になったのでビジネスホテルの費用も。紙とペンも必要ですし、テープ起こしのためにイヤフォンが欲しくなって、ついついハイレゾ対応のワイヤレスにしましょう。

そんなこんなで230万円くらいが経費となったわけです。副業のくせにずいぶん稼いだけど、経費もたくさん使ったなーとか思っていたら、確定申告の季節がやってきます。確定申告のあれこれは、書きかけですがこちらの記事を。

確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。まずは控除のない白色申告の場合を考えてみました。

課税される所得金額……5,000,000円(副業における事業収益)-2,300,000円(副業における経費)=2,700,000

ここに所得税がかかるのですが、所得金額が『195万円超330万円以下』の場合は、税率10%をかけた金額に課税と決まっていて(詳しくは国税局のホームページをどうぞ)、かつ控除額が97,500円というのも決められています。よって

所得税額:2,700,000×10%-97,500円=172,500

172,500円の所得税を納める必要があるとわかりました。

続いて青色申告の場合を考えてみましょう。

課税される所得金額……5,000,000円-2,300,000円-650,000万円=2,050,000

白色申告との違いは、所得金額から青色申告特別控除による65万円をさっ引いたところ。よって所得税として納める金額は……

所得税額:205万円×10%-97,500円=107,500

107,500円が所得税として納める金額だとわかりました。白色申告の172,500円に対して、青色申告では107,500円。その差額は実に65,000円もあるのです。65,000円あったら、何に使いますか?ソシャゲに思う存分課金しても大丈夫なんです。

損益通算ができる

ついでに記載しておくと、青色申告では損益通算という技が使えるようになります。ソンエキツウサン! つまり何かというと、副業による事業所得でマイナスが出た場合、他の所得とごにょごにょして、総所得金額を少なくすることです。例えば副業であれば、本業の会社からもらっている給料、給与所得があります。給与所得に対しても所得税がかかっていますが、この所得税を少なくできるというわけ。

損失の繰越控除ができる

ついでのついでに記載しておくと、副業の事業所得がマイナス、赤字になった場合、損益通算しても控除しきれない金額部分を、翌年以降最大3年間まで繰越すことができます。

ここもざっくりいうと、副業の初年度で大きな赤字が出た(……出せた)場合、その年と翌年以降の所得金額から控除する=所得税を抑えることができるんです。

だから副業の収入は事業所得にするのがおトク

ということで、青色申告はトクすると理解していただけましたね。話を戻して、副業の収入が事業所得をお勧めするのは、青色申告をするためです。

青色申告でトクをするには、副業の収入を事業所得にしなくてはなりません。雑所得にカテゴライズすると、青色申告を認めてもらえなくなるんです。世知辛いですね。

所得税をズルすると、逮捕されちゃう

損益通算について知識を得ると、副業を実践している人にしたら、ひとつの妙案が浮かびませんか。本業の給与をもらいながら、副業は経費をたっぷり計上して赤字にする。

覚えたての損益通算を発動することで……払いすぎた所得税が還付されるというミラクルです。わたしのような愚民で思い浮かぶわけですから、青春時代を勉強に捧げた賢人はとっくに実践しています……というコラムを息抜きに書いてみました。

経営コンサルタントという、正直なにをしているのかわからない仕事で生計を立てる人がいます。経営のコンサルティングをするわけですが、きっと彼らがいると、会社経営に成功するんでしょうね。さしずめ、会社経営のプロの先生・師匠といったところ。経営者というだけですごいのに、さらに上をいく存在ですから、それはそれは頭が良いわけです。

2010年のこと。経営コンサルティング会社『株式会社グローバルワークス』の代表取締役本多弘樹(当時34歳)は、顧客に対してスペシャルなソリューションを提供しました。本多弘樹の必殺技『ソンエキツーサン』によって、およそ1年半という短い期間にも関わらず、2531万円を生み出したのです。しかも、まったく労働をせずに。なんというイリュージョン。そのカラクリはこうです。

本多弘樹の顧客に対して、副業を実践(架空)させ、赤字(架空)で確定申告をさせ、損益通算によって本業の給与所得に対する所得税を軽減させたのです。さらには税理士資格を持たないまま、顧客13人分の確定申告書を作成したとか。バレなければ、ミラクルなソリューションでイリュージョンでアプローズです。しかも手の込んだことに、顧客の得意分野にあわせて『スポーツインストラクター』『グラフィックデザイナー』『塾講師』など、副業の種類を変えていたそう。

まぁ、結果として所得税法違反で逮捕されましたけどね。執行猶予が4年つきましたが、懲役18ヶ月と罰金600万円の判決。悪いことはするもんじゃありませんね。こつこつ副業に勤しむのが良さそう。

ということで本稿では、副業の定義について総論をお届けしました。ぜんぜん文章とは関係ない話になりましたが、副業ライターが増えている昨今ですがから、何かのお役に立てていただけたら幸甚(←使ってみたかっただけです)でございます。現場からは以上です。