ライターの価値を高める、ブランドの正体と基礎知識

ライターの価値を高める、ブランドの正体と基礎知識

基本的にこのブログには、ライティングや文章についての戯言を書いています。でもたまに、少し脇道だけれども、ライターが知っておいたら良いこと関係も書くことがあるんです。本稿はそのシリーズで、ブランドについて触れてみます。

ライターがブランド化する時代

Webが主戦場のライターを中心に、ブランド化なるものが語られています。有名なライターさんのこと、またはライターとして有名になることを指していて、インフルエンサーに近いニュアンスもあるようです。

たしかに、ライターのブランド化って興味深いですし、理にかなっていると思います。読んでもらってナンボのライター業ですから、ブランド化された人が書いたというだけで読者が集まるのなら。または特定のライターが書いたということが、(読者にとっての)品質保証になるのなら、素敵な話です。

ライターが、ブランドを学ぶ理由

わたしはブランドのあるライターではありません。ですから、ライターのブランド化について語れるわけではないんです。ここで紹介するのは、いわゆる『ブランド』の定義であったり、なんの役に立つのかという一般論。

仕事柄、企業や商品・サービスのブランド、ブランディングというものに触れる機会が多くあります。自分自身がブランド化する話ではありませんが、ライターとして仕事の選択肢を広げるのなら、ブランディング方面の知識を持っておくのも◎。

高報酬の仕事を経験したいライターの方々や、会社やサービスに影響を与える仕事に興味があるライターの皆さんでしたら、ぜひお付き合いください。

そもそも、ブランドってなんだ?

日常生活で何の気なしに使っている『ブランド』という言葉。改めて「ブランドってなに?」と問われると、正確に、自信を持って回答できない人が多いのではないでしょうか。かくいうわたしもそうでした。

「ブランド、でしょ。知ってる。あの……カバンよ。ルイヴィトンとかさぁ」なんて、いわゆるブランド品やファッションブランド名を答えて、なんとなく煙に巻いていたものです(巻けてない)。

まず言葉の定義を確認してみましょう。ウィキペディアによると……

ブランド(英: brand)とは、ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念。当該財サービス(それらに関してのあらゆる情報発信点を含む)と消費者の接触点(タッチポイントまたはコンタクトポイント)で接する当該財サービスのあらゆる角度からの情報と、それらを伝達するメディア特性、消費者の経験、意思思想なども加味され、結果として消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体。
引用:Wikipedia

だそうです。『ブランドとは……うんちゃらかんちゃらほげほげうんぼぼうんぼぼ……概念のことである』と書かれています。そうか。ブランドとは概念のことなのか。

もう少し言葉を拾ってみると、ブランドとは……他の同カテゴリーの財やサービスと区別する/消費者の接触点で接する当該財サービスのあらゆる角度からの情報/伝達するメディア特性/消費者の経験/意思思想なども加味/結果として消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体……だそうです。最後の部分は少ししっくりきたかもしれませんね。

ブランドとは、消費者の中でできあがるサービスに対するイメージ。これなら理解ができそうです。

ブランドが果たす役割とは

ウィキペディアから引用した『ブランド』という言葉の定義は、なんとなく理解いただけましたか? でもまだまだ、ブランドの真意には迫れていない感じがします。

間違えやすい、ブランドに対する認識

たとえばあなたが会社員であり、上司もしくは部下にブランドとはなにかを説明するときに、

  • テレビ・雑誌・インターネットの広告で形成されるイメージのこと
  • ルイヴィトンやシャネルのような高級品のこと
  • CIのことですよ。つまりロゴとかネーミングとか

なんて回答をしてしまいませんか? 実は上記は、日本のビジネスシーンで誤解されがちな「ブランドとは」です。特に3つ目の例は顕著で、日本のブランド戦略というものは、CI(念のためですが、Corporate Identity:企業のイメージを示すデザインの総体)がスタートになることが多く、アウトプットがロゴやデザインという目に見える形になっていることで、誤解されがちというのが事実。

ブランドとは、識別記号のこと

ブランドの語源を辿ると、牛や豚などの家畜に対して「自分の育てた牛だ(豚だ・鶏だ)」とわかるように、また他人に間違われないよう、識別するために焼印を押した行為にあるといわれています。

当時の意味合いとしては、自分と他人の所有を明確にする、認識しやすくするための『識別記号』であったわけです。これはいまでも通用する考え方で、『ブランドとは、自社の商品と他社の商品を区別するためのもの』と言われたら理解できるでしょう。

先述したブランドの誤解「ブランドとはネーミングやロゴのことですよ」は、あながち間違いでもないように思えます。ロゴやネーミングは、自社の商品と他社の商品を識別するための記号である。はい。なんだかしっくりきますね。

ブランドとは、知覚価値のこと

もうひとつブランドが果たす役割として重要なのが、知覚価値にあると考えられます。『知覚価値』という言葉、聞きなれないかもしれませんね。例によって語句解説を引用してみます。

知覚価値とは消費者が製品に対して抱く品質や費用に対する総合的な価値判断のことをいう。費用は総顧客費用であり金銭的費用だけでなく心理的コストなどを含む。
引用:ブランド戦略通信

英語ではperceived valueと呼ばれており、perceivedは認知を意味します。直訳すると認知価値。まだ少ししっくりきませんね。もうちょっと噛み砕いてみます。

わたしも好きで使っているのですが、Apple社が提供する製品の中に、macというパソコンがありますよね。1984年に初代macが登場してから、いくつもの革新的なプロダクトがリリースされました。このブログを書いているのも、ノートブック型Macintoshのシリーズである『mac book pro』です。たまに持ち運びに便利な『mac book』という、12インチモデルを使うこともあります。

Appleと聞いたときに、どんなイメージを持つでしょうか。パソコンに疎ければ、iPhoneでもかまいません。何かしら脳内にイメージされるものがあるでしょう。それを言語化してみると……「革新的な製品」「スタイリッシュ」「おしゃれ」「高性能」などが出てくるかと思います。

ブランドの名称を聞いて頭に浮かぶイメージこそが、知覚価値というものです。

ブランドが持つ価値とは

識別記号と知覚価値のふたつが、ブランドが担っている役割です。実際のところブランド議論は盛んであり、このふたつの役割に限定してしまうことは危険なのですが、便宜上、ふたつの役割ということにしておいてください。

ではブランドとは、なんの価値があるのでしょうか。識別記号と知覚価値のふたつを、実例に照らし合わせてみましょう。

  • 識別記号:囓りかけの林檎のマーク
  • 知覚価値:革新的な製品というイメージ

これがApple製品に対する、消費者の理解です。囓りかけの林檎マークを見れば、誰もが「Appleの製品だ」とわかります。同時にAppleのロゴマークを見ると、「革新的なプロダクトだよなぁ」と知覚価値を思い浮かべる。逆もあり得ます。「スタイリッシュなスマートフォンが欲しいな」と知覚価値を想像したときに、Appleのロゴマークを頭に思い浮かべるでしょう。

ここまでくると、Apple製品は分野を代表するブランドになっているといえます。パソコンやスマホ市場において、競争相手に対して優位性を持っている状態。同じ製品群を扱っているソニーという会社がありますが(正確には、過去において同じ製品群を持っていた)、彼らがAppleの牙城を崩そうとしても、わたしたちの想像をはるかに上回るイノベーティブなアイテムを出さない限り難しい。

ライターとしてブランドになるということ

本当でしたらもっと詳細に、ブランドの持つ力・価値についてお伝えしたいところですが、長くなりすぎたので筆を置きます。またどこかのタイミングで、ブランド化することの利点について触れますのでお楽しみに。

はっきりしているのは、ライターもブランド化することで有利になるということ。例えば最近、Web場で有名なライターに「ヨッピー」さんという方がいらっしゃいます。

彼が書く記事の多くは、読者から大反響。たしかに面白いのです。独自の切り口ですし、文体も記事の体裁もこれまでになかった印象があります。いちファンとしては、「ヨッピーの記事だから面白いだろう」という期待と安心感を持って読み始めることができる。発注主としても、一定の反響を期待することができるわけです。

ライターとしてブランド化するということは、読者とクライアントに対して、品質保証になると考えられます。できることならブランド化したいなぁ。現場からは以上です。