修飾語の順番について、『長い方、文字数の多い方を前にする』と『被修飾語と近づける』について解説しました。もうひとつ覚えておきたい、『大きい話を先にする』について解説します。修飾語の順番に迷ったら、大状況から小状況へ。3つの法則を抑えておけば、修飾語の順番については、ひとまず安心できます。
修飾語が複数あるときは、重要な事柄を先に説明する
修飾語が複数ある場合、法則のひとつは、長い方・文字数の多い方を先に書くのが鉄則です。では、文字数が同じくらいの修飾語が、ひとつの被修飾語にかかる場合に遭遇したら。文字数の原則が使えない場合は、どうやって順番を決めたらいいのでしょうか。まずは以下の例文をご覧ください。
明日の早朝から 会社の大会議室で 不祥事が理由で、経営会議が開かれる。
あえての理解がしにくい例文にしましたが、半角スペースが空いている箇所で、修飾語が切れています。『明日の早朝から』と『会社の大会議室で』と『不祥事が理由で』という修飾語が、『経営会議が開かれる』にかかっていきます。それぞれ文字数は、7文字、8文字、7文字となっていて、大差はありません。
長い方を前というルールに従うならば、辛うじて文字数の多い『会社の大会議室で』を先頭にしましょうか。でも2番目はどちらも7文字で同じ。文字数の多さを背の順とするなら、つぎはアイウエオ順にでもしてみますか。いやいや、小学校の席順ではありませんから、アイウエオ順も背の順も出る幕はありません。
こんなときに覚えておきたいのが、重要な事柄、大状況を先に持ってくるという手法です。重要な修飾語を前に持ってきて、徐々に話のスケールを小さくしていく。例文を並び替えてみましょう。
不祥事が理由で 明日の早朝から 会社の大会議室で、経営会議が開かれる。
例文1と比べて、話の内容がすーっと頭にはいってきませんか。文字数で考えると『会社の大会議室で』が先頭になるのですが、事の重大さとしては、『不祥事が原因で』のほうが上だからです。まぁ人によっては『明日の早朝から』が最重要事項である、と思うかもしれません。「いつも遅刻ぎりぎりに出社しているのに、早朝から会議なんて耐えられません」という人がね。
読み手に対して、理解する準備をしてもらう修飾語の順番
ではどうして、重要な修飾語を先に持ってくると、理解がしやすいのでしょうか。わたしは脳科学者などではないため、人の頭の中身については知見がありません。ですのでコミュニケーション術から導き出した自論として説明します。
他人に何かの情報を伝えようと思ったら、手段が言葉にしろ文章にしろ踊りでも暴力でも、相手の意識を『聞く体制』にすることが必要だと考えているんです。「ねぇねぇ」「あのさー」「おい」でもなんでもいいのですが、言葉のヒゲにだって、相手の注意を向けさせるという役割がありそう。
電話の冒頭に「もしもし」というのだって、昔の電話は通信状況が悪かったため、「もうしあげる、もうしあげる」と伝えてから話はじめたというじゃありませんか。「話しますので聞いてくださいね」という宣言があれば、(よほど性格が悪いとかあなたを嫌っていない限り)「どれ、ひとつ聞いてやろうかな」という気持ちになるもの。
文章の場合は、なんらかのテクニックによって目に留めてもらえたら、一文目は二文目を読みたくなる情報を入れるのが定石。最初の文で「お、なんだ?」と気にしてもらい、次の文を読み進めてもらう必要があります。読み始めてくれた後においても、一文一文を理解してもらうのであれば、常に読み手の頭に驚きやインパクト(驚きと同じような意味ですね)を与え続けて、脳裏に焼き付けてもらいたいものです。
つまらない、どうでもいい情報を先に提供する事で、「どうせこの先も大したことは書いていないんだろう」と思われてしまったらもったいない。そもそも『どうでもいい情報』を入れること自体が悪なのですが、いったん脇に置いておきます。
そこで修飾語が複数出てきたときは、重要性の高い情報を先に持ってくると、大事なことから理解してもらえますし、次の文を読み進めてくれやすくなると考えます。また「大事なことが書いてある」と意識してもらうことで、文章を目で追うだけでなく、理解しようという心持ちになってもらう。
修飾語が複数ある場合に大きな事柄を先に書くことで、より理解されやすくなる、伝えたいことが伝わっていく作用があると思うのです。修飾語の順番に迷ったら、長いものを先にしながら、かつ重要性の高いものを前にもってくる。これができるだけで、随分と読みやすく、理解してもらえる文章になるでしょう。現場からは以上です。