主語と述語を近づける、それだけで文章が確実に上手になる

主語と述語を近づける、それだけで文章が確実に上手になる

さまざまな、理解できる文章作成のティップスを紹介してきました。その中でも決定版ともいえる方法がこれ。主語と述語を近づける文章法です。読みにくい、理解しにくい(まったくできない)文章の大半は、主語と述語の関係が不明確になっています。主語と述語の距離を近づける、これだけで文章の意味が理解しやすくなる=文章が上手になるんです。

ライトなメッセージがビジネスシーンに利用されるからこそ、理解される文章力を

わたしたちは毎日、なんらかの文章を書いています。ライターの人であれば商業文章ですし、会社勤めをしていたらメールや報告書、企画書の類には必ずテキストが存在しますよね。

最近ではe-mailの使用頻度が下がってきました。FacebookやLINEなどの各種メッセージツールが、ビジネスのなかにも違和感なく取り入れられています。またSlackやchatworkなどのチャットツールが、会社のオフィシャルコミュニケーションツールとして導入されることも珍しくありません。

どの手法を選ぶにしても、主役は文章です。写真やイラストで説明するほうが伝達スピードが早い場合を除いて、文章こそが最大のコミュニケーションツールといっても差し支えがないレベルになりました。

プライベートはもちろん、ビジネスシーンにおいても、文章力が低いのは致命的。重要事項であればあるほど、誰もが確実に理解できる文章を書けなければ、大きな機会損失につながります。だのになのに、世の中には文章力のない人がどれだけ多いことか。まったく意味がわからなかったり、複数の解釈が存在したり、理解するのに時間がかかったり。

口頭で伝えてもらったほうが、適時の質問をはさめるから楽に思うこともしばしばあります。でも、発信者の都合で他人の時間を奪わない、メッセージによる伝達は捨てられません。どうかひとつ、ここで紹介する方法を意識していただいて、読み手にストレスを与えない文章を書いていただきたいものです。

彼の文章が意味不明なのは、誰が何をしたのかが不明だから

理解してもらえる文章作成の基本、かつ決定版として推奨したいのが、文章の主語と述語を近づけることです。あなたの文章、もしくは彼や彼女の文章が意味不明なのは、おそらく主語と述語の関係性が曖昧だから。関係性というと解釈が広すぎるので、本稿では主語と述語の物理的な距離についてと定義します。

文章において主語と述語の関係性が曖昧だと、主語に対する述語がどれなのかがわからなくなります。「“誰が”はわかったけど、何をしたのかが理解できない」という場合、おそらく主語と述語とが遠く離れているのです。痛ましい事故の例文で恐縮ですが、この文章を書いている時点でニュースになっていた実話を元に例文を書いてみましょう。

今日未明、2歳の少女が、埼玉県さいたま市にある大型パチンコ店の駐車場で、両親が遊戯中に炎天下の駐車場に停めた車の中で、窓を締め切ってエアコンが停止した車内に置き去りにされたことによる熱中症で死亡した。

ちょうど100文字の一文ですが、さまざま要素が含まれています。本稿で取り上げたい主語と述語については、あえて、かなり遠い位置に置いてみました。ここまでの悪文だと、主語がどれなのかすら見失いそうですね。

『今日未明、』はニュース記事らしく、時系列を先頭にもってきただけ。『(2歳の)少女が、』の部分が主語になります。では述語はどこかというと……83文字後方にある『(熱中症で)死亡した。』ですね。100文字の一文において、主語と述語の間に80%以上の文字が並んでいます。これは主語と述語が遠すぎるといえるでしょう。

例文における主語と述語の間には、『埼玉県さいたま市に』『ある』『大型パチンコ店の』『駐車場で』『両親が』『遊戯中に』『炎天下の』『駐車場に』『停めた』『車の中で、』『窓を』『閉め切って』『エアコンが』『停止した』『車内に』『置き去りに』『された』『ことに』『よる』といった複数の文節が挟まっています。

この80文字以上・20文節以上の言葉のせいで、主語と述語に大きな溝ができてしまったため、ぱっと見では理解ができない文章になっているのです。

長い文節の間から、主語と述語を取り出してあげれば理解できる文章になる

先述した悪文を、誰もが一目で理解できる文章にするには、主語と述語だけを取り出してあげるのが近道。主語に対して述語がどれなのか、を理解しやすく工夫するのです。

今日未明、2歳の少女が、熱中症で死亡した。

主語と述語の幸せな関係を邪魔していた文節たちを、単純にすべて取り除いてみました。これならば、誰が、何をしたのか(どうなったのか)が一目瞭然です。

ただし情報が不足しすぎるので、ひとつふたつの文節を残してみましょう。

今日未明、2歳の少女が、窓を締め切ってエアコンが停止した車内に置き去りにされたことによる熱中症で死亡した。

これだけで、もう痛ましい事故であることが想像できます。責任の追及をしたい場合は、別の一文として情報を補っていけばいいわけです。

今日未明、2歳の少女が、窓を締め切ってエアコンが停止した車内に置き去りにされたことによる熱中症で死亡した。(事故が起きたのは、)埼玉県さいたま市にある大型パチンコ店の駐車場。両親が遊戯中に炎天下の駐車場に停めた車内(に)、少女を置き去りにしたこと(が原因)。

いくつか接続詞を変更したり単語を追加しましたが、大きな変更は加えていません。

100文字の一文から、123文字の文章へと改変したので、わかりやすくなったものの「文字数が増えすぎて紙面に収まらない」という可能性もあります。であればいくつか情報を削って、理解できる&100文字以内に変更すれば良いだけです。

2歳の少女が、窓を締め切りエアコンの止まった車内に放置され、熱中症で死亡した。事故現場は、埼玉県さいたま市の大型パチンコ店駐車場。両親が炎天下の駐車場に停めた車内に、少女を置き去りにしたことが原因。

こちらで100文字になりました。元の悪文と比較して、意味は理解しやすく、かつ不足している情報はないかと思います。

主語と述語の距離を最短にすれば、最短で理解される

主語と述語の距離を近づけましょうという話でしたが、とにかく近ければいいというわけでもありません。主語と述語だけで会話をしたら、たどたどしいというか、幼稚、もしくは習いたての外国語を使っているように感じられます。

そこは適度に文節を補足しながら、かつ長くなりすぎない、主語と述語が疎遠になりすぎない文章を作成してみてください。それだけで、主語と述語を近づけるだけで、上手かどうかはおいといて、意味が理解できる文章になるのですから。現場からは以上です。