サイトアイコン writers way

働き方改革で副業が推進される本当の理由と恐怖

働き方改革で副業推進

副業ブームがどうしてやってきたのか。その理由に迫る「副業シリーズ第二弾」です。第一弾は「サラリーマン、副業する前に知っておく基礎知識」を公開していますので、基礎知識を知っておこうと思った方はどうぞ。

副業ブームの火付け役(?)、働き方改革とは

副業が流行ってるわけですが、どうしてこんなにも騒がれるのでしょうか。副業という言葉は昔からあったわけですが、この数年でやたらと耳にします。

どうして今さら副業? 理由のひとつに挙げられるのが、安倍内閣が掲げた『働き方改革』でしょう。正確には、安倍内閣が掲げた『一億総活躍社会の実現』という宣言に基づきます。

ニッポンを元気にする、一億総活躍社会とは

安倍内閣が発足したのは2006年9月が最初。2014年のクリスマスイブからを第三次安倍内閣(安倍政権)と呼び、翌2015年10月に第一次構造改革として、『一億総活躍社会の実現』を目玉プランとして宣言しました。

少子高齢化が進む日本において、50年後も人口1億人を維持して、家庭や職場、地域で誰もが活躍できる社会を目指すプランです。具体的には、経済成長、子育て支援、社会保障の安定を掲げています(3本の矢なんて言ってます)。

さらに具体的にしてみると……経済成長にておいては、『希望を生み出す強い経済』により、東京五輪が開催される20年頃にGDP600兆円達成。子育て支援においては、『夢をつむぐ子育て支援』で、希望出生率を1.8(現在は1.4前後)まで回復。社会保障については、『安心につながる社会保障』により、団塊世代が70歳を超える2020年代に、介護離職ゼロの実現を目指しています。

働き方改革はどこにいったかというと、2015年10月29日に開催された『一億総活躍国民会議』および続編で、以下の8つが『一億総活躍社会』を実現するプランだと発表されました。

  1. 成長と分配の好循環メカニズムの提示
  2. 働き方改革
  3. 子育ての環境整備
  4. 介護の環境整備
  5. すべての子どもが希望する教育が受けられる環境の整備
  6. 「希望出生率1.8」に向けたその他の取組
  7. 「介護離職ゼロ」に向けたその他の取組
  8. 「戦後最大の名目GDP600兆円」に向けた取組

働き方改革って、何してくれるの?

プランの二つ目にあるのが、『働き方改革』です。具体的には何を進めようとしているかというと、『同一労働同一賃金の実現』『長時間労働の是正』『高齢者の就労促進』という3大課題解決に臨もうとしています。それぞれを簡単に解説しますと……

同一労働同一賃金の実現:非正規雇用の待遇改善を図るため、ガイドラインの策定等を通じ、不合理な待遇差として是正すべきものを明示。また、その是正が円滑に行われるよう、労働関連法の一括改正。
長時間労働の是正:仕事と子育ての両立、女性のキャリア形成を阻む原因。法規制の執行を強化するとともに、労働基準法については、36(サブロク)協定の在り方について再検討を開始。
高齢者の就労促進:65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業等に対する支援等の実施。

みたいなことを掲げていました。そして2017年4月に提出された『働き方改革実行計画』で、9分野の改革が打ち上げられたわけです。

もっとも2017年10月に衆議院選挙が行なわれて自民党が圧勝したこと、以降の森掛問題などの疑惑が続いたことで、うやむやになるんじゃないかとか思ってます。

上記が働き方改革の重点9分野です。もっと詳しく知りたい方は、こちらの『働き方改革実行計画』でも見ておいてください。

副業・兼業の推進とは

このブログ、ライターによる文章作成のあれこれを書いていくはずだったのですが、なぜか社会科の勉強みたいな記事になってしまいました。……やっと本稿の本題である、副業の話に戻ってきますよ。

『一億総活躍社会の実現』に向けた『働き方改革』によって、どうして副業が流行り出したのか。『働き方改革実行計画』重点9分野にある、『柔軟な働き方』というやつが、副業に関係してくるんですね。内閣の資料によると

副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定
副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る。副業・兼業のメリットを示すと同時に、これまでの裁判例や学説の議論を参考に、就業規則等において本業への労務提供や事業運営、会社の信用・評価に支障が生じる場合等以外は合理的な理由なく副業・兼業を制限できないことをルールとして明確化するとともに、長時間労働を招かないよう、労働者が自ら確認するためのツールの雛形や、企業が副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインを策定し、副業・兼業を認める方向でモデル就業規則を改定する。
引用:働き方改革実行計画

と表現されています。

「副業・兼業をしたいという人は増えているけど、会社が認めていないよ。でも副業や兼業にはメリットがあるから、企業側に社員の副業や兼業を認めるように指導していきたいんだ」ということです。

どうして政府は、副業・兼業を勧めるのか

でもどうして、安倍内閣は副業・兼業を勧めているのでしょうか。日本の国際競争力が弱まっているから、もっと馬車馬のように働かせたい? 個人の収入が増えれば、税収が上がっていろいろな問題が片付く?

税金の件は目論見としてありそうですが、微々たるものでしょうし、まどろっこしいことをするなら、消費税率引き上げを強引に通してしまうでしょう。

政府が副業・兼業を支持するには、日本の置かれた労働環境・労働力人口の課題があるようです。労働力人口とは、労働に適する年齢以上で労働の意思と能力を有する人の数のこと。就業者と完全失業者を合わせた数が、労働力人口としてカウントされます。

日本の人口が減少している、かつ超高齢社会に突入したのは周知のことです。これに伴って、労働力人口の減少が社会問題になっており、現状のまま年月が過ぎると、致命的な国力減退の要因となります。では人口を増やして、労働者が減らないようにしたら万事OKじゃないか、と。

出展:総務省統計局

ところが日本の人口推計をみると、どうがんばっても労働力人口が増えるとは思えません。むしろ右肩下がりに減っていく未来しか描けないわけです。だからこそ、労働力人口確保に向けた「働き方改革」が必要というわけ。

副業・兼業推進の本当の理由は?

労働力人口が増えないから副業? というのにはもう少し理由があって、「テレワークは時間や空間の制約にとらわれることなく働くことができるため、子育て、介護と仕事の両立の手段となり、多様な人材の能力発揮が可能となる。副業や兼業は新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効(引用:働き方改革実行計画)」と考えているそうです。

もっと裏読みすると、このままでは日本企業および働いている人の未来は明るくありません。人口が減っていくわけですから、あらゆる物やサービスの消費者が減るんですから。企業としては雇用の維持が困難になる、もしくは賃上げが苦しくなります。だったら働き手側が、雇用されている会社に頼らず、自分の力で収入を上げていこうよ、ということなんでしょう。

もっと深読みすると、例えば昨年くらいによく目にしていたんですが、ヤフー株式会社が副業を推進しているという記事(画像引用:THE LANCERがあります。

紹介されている方は若手で、「自分の力が社外で通用するか試したい」という立派な心がけをなさっています。彼は該当しないですが、ヤフーという会社のことをあれこれ考えてみると、副業を推進している理由はもっと闇が深いように思えるんです。

ヤフー、つまりYahoo! が誰もに知られるようになったのは、インターネットの普及と多くの人がパソコンを持つようになったから。

当時のインターネットにつながるツールとしては、スマホやタブレットではなく、パソコンだったんです。Yahoo! という巨大なポータルサイトを構築し、多くの人がアクセスしました。事業が急激に伸びているから、ヤフーは社員をたくさん雇います。パソコンでアクセスするユーザーに向けて、有益なコンテンツを出しまくったわけです。

当時に活躍していた社員も、いまでは40代や50代になっているでしょう。人間は悲しいもので、誰もが歳を重ねるのに、誰もが新しいものを受け入れたり、時代についていけるわけではありません。ヤフーという巨大企業においても、働いている人の何割かは、今の時代に合ったパフォーマンスを上げるのが難しくなっているのではないでしょうか。

現代はパソコンよりも、モバイルの時代です。20年前からヤフーを支えていた優秀な人の中には、残念ながらスマホシフトできない人もいるはず。彼らはこの先、給与に見合ったパフォーマンスを上げ続けられるのでしょうか。成果を出して、給与を上げていけるのでしょうか。きっと難しいでしょう。

しかし功労者たち。彼らの人生を狂わせないためにも、副業で収入アップという道を残したのではないかと推察します。

まぁ実際には、創業時から副業を解禁していたそうなので、半分くらいは間違っているかもしれませんが。

お伝えしたかったのは、副業解禁によって、(わたしのような)ロートルたちに会社以外で収入アップする手段を提供できるようになるということ。政府も当然、企業の苦しい懐事情や未来のことを見据えているのでしょう。現場からは以上です。

モバイルバージョンを終了