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文章力を身に付けたいのなら、お茶くみよりコピーを学べ

ライターがコピーを学ぶ意義

お茶くみじゃなくって、コピーを学ぶことは、ライターとしての価値を高めることになると考えています。コピーライターが紡ぎ出すアウトプットの真骨頂は、短い文章でありながら、読み手の心をぎゅにんっと鷲掴みにするところ。魔法のような言葉使いのテクニックがあれば、わたしたちの書く文章は驚くほど重宝されるようになると思うのです。

広告コピーの価値とは

コピーライターとライター(Webライター含む)の違いとは。皆さんがイメージし易いのは、文章の長さや文字の量でしょうか。確かにコピーライターの書く文章は、ライターと比べて少ない文字数であることがほとんどです。

なぜならコピーライティングとは、広告に用いられる文章だから。使い古されていますが、「広告は見てもらえない存在」だと言われます。見てもらえない前提だから、長々と書いている場合じゃない。

テレビ番組を見ているときに、CMという広告が挿入され煩わしさを感じることがあるでしょう。YouTubeでお気に入りのミュージッククリップを見ているときも、冒頭や途中でTrueViewと呼ばれる広告が邪魔をしてきます。目的と異なる映像や写真や文章を見せられると、求めていないわけですから当然、うるさく思うわけです。

そんな嫌われ者なのに、目を背けられたり飛ばされたりトイレに立たれたりもするのに、一瞬のスキをついて視聴者・読者の行動欲を刺激するのが広告の運命(と書いて「さだめ」と読む)。

機能する広告コピー、つまり目的を果たすコピーを書けることは、文章を生業にする人にとって憧れであり、一撃必殺の文章術を身につけるに等しいと言えそうです。

短い文章なのに高額報酬?

クラウドソーシングのライターを中心に、文字単価(一文字あたりの原稿料)という言葉が使われるのを耳にしませんか? 1文字あたり1円の報酬だったり、2,000〜3,000文字程度の記事を書いて数千円からの仕事が存在します。

それに引き換え広告コピーは、1文字あたり数万円や数十万円になることも少なくありません。いや、もっと高額かも。

長い場合でも数行程度、短ければ数文字程度。有名なところを紹介すると、

そうだ 京都、行こう。 (JR東海/京都キャンペーン)

などがそれです。スペースをカウントしないならば、句読点を含めてもたったの10文字。

そうだ 京都、行こう。を書いた人とは

JR東海の広告は、佐々木 宏さんがクリエイティブディレクターを務め、太田 恵美さんがコピーライティングを担当しています。佐々木さんはシンガタというクリエイティブエージェンシーで活動する、広告好きにはたまらない存在。大田さんはJR東海の京都シリーズだけでなく、サントリーのBOSSなども手がけています。

たった2文字のキャッチコピー

太田さんのキャッチコピーで一番驚いたのは、サントリーが販売する飲料水『ヴィッテル』のポスター作品。

ヴィ

これだけです。驚きましたよね。わたしも初めて見たときはびっくりして、椅子から転げ落ちそうになりました。

キャッチコピーは、驚愕の2文字。ヴィってなんですかね。ただの擬音じゃないですか。ただしキャッチコピー2文字の後には、ボディコピー(と呼ぶにはこれまた短い)が続いています。

ヴィ ヴィッテル。ナチュラル。ナチュラルミネラルウォーター。ミネラルバランスがいい。ゴクゴク飲める。 (サントリー/ヴィッテルポスターより)

商品名と天然てことと、栄養分と喉ごしだけ。太田さんはこのコピーで、いったい幾ら手にしたのでしょうか。

まさか「文字単価1円なので、キャッチコピーは2円ね」とか「ボディコピーも入れて……57文字だけどオマケして100円!」なわけがありません。

実際のところ報酬額はわかりませんが、きっとわたしたちの1記事よりも桁がひとつ、場合によってはふたつくらい違うのでしょう。

コピーライターの仕事

たかだか数十文字で何万円、何十万円、何百万円も懐にいれるなんて、実にけしからん!と嘆きたくなる気持ちをそっと抑えましょう。コピーライターの仕事とは、何も文章を書くことに終始しないのですから。

ここでコピーライターの仕事についてウンチクは語りませんが、第一線で活躍なさっている方々は、そのキャンペーンにおけるコミュニケーション設計の大部分を担っています。

商品やサービスなりの広告する対象がなんなのか。届けるべき相手が誰で、何がベネフィットになるのか。発信者と受け手の関係性は? などなど、とかとか。様々なことを考え抜いたアウトプットのひとつが、広告コピーにすぎないのです。

コピーの効果

成功した広告キャンペーンのほとんどすべてに、キャッチコピーやボディコピーがあります。人々の印象に残るのも、写真や映像、音楽はもちろんですが、コピーの一部だったりするでしょう。

先に紹介したJR東海のコピーなど、秀逸ですよね。CMやポスターなどでコピーを目にしたときに、「京都ね。最近、行ってないなぁ」とか「冬の京都も行ってみたいな」と思わせてしまう。

ついつい京都旅行の予定を立ててしまう。たとえ彼女がいなくても、京都をチラつかせればどうにかなると思ってしまう(関東人における、京都3割増し問題)。……閑話休題。

「そうだ 京都、行こう。」と言われて(読まされて)、「そうです、そうです。京都に行くであります!」となる人のほとんどが、京都以外に在住でしょう。彼らが実際に京都へ足を運ぶとなったら、一番利用される交通機関は新幹線ではないかと推察します。

季節ごとに「京都いきたいなぁ」と思わせて、年に4回新幹線に乗ってもらう。それが100万人いたとしたら。いや、100万人ってことはないかもしれません。実際に京都の旅行者数は、2017年に京都市が発表したデータによると、日帰りと宿泊客を合わせると、4,861万人(日帰り3,764万人)にもなるそうです。

JR東海さん、ウハウハですよね。実際にウハウハでガハガハしてるからこそ、「そうだ 京都、行こう。」のコピーが20年以上(1993年が初登場)も使われているんだと思います。

テキストのアウトプットは数文字でも、生み出す経済効果は計り知れない(本当は計れる部分もあるけど)のです。これこそが、コピーライティングが求められる理由。優れた広告コピーには、人の気持ちや行動変容を引き起こし、経済に寄与する力があるのです。

コピーライティングを学んで、読まれる文章を書こう

ライターの道を歩み始めたのがコピーライターだったせいか、ついつい長くなってしまいました。単純に、文章よりも広告とそのコピーが好きということかもしれません。

お伝えしたかったのは、長文を書いているライターであっても、広告コピーを学んでみてはいかがでしょうか? ということ。嫌われ者なのに、記憶に焼き付けてしまう言葉。ついついお金を払ってしまうように、人の心を動かせる言葉。それが広告コピーの力なんだと思います。

ライターとして記事を書いているのでしたら、何かしらの目的があるはず。クライアントの商品を売るためだったり、出稿主の会社のファンをつくるためだったり。お金をいただいて文章を書いているのですから、必ずその先には企業活動や経済活動があります。

つまりわたしたちが望まざるとも、ライターの書く文章はお金を集めるために存在しているのです。だったら目一杯、ポジティブな気持ちで人々を動かす文章を書きたいですよね。そのためにコピーライティングを学ぶことが、有益だとわたしは考えています。現場からは以上です。

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