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アナログ世代のあなたも理解できる、インバウンドマーケティングとは

近年、話題になっているマーケティング手法の『インバウンドマーケティング』。横文字の言葉が氾濫していて、アナログ世代の方の中には「理解するのがツラい……」なんて嘆いている人も? でもビジネスの世界で生き残るためには、なんとか食らいついていかないといけません。「アナログ世代のための、インバウンドマーケティングってなに?」をご紹介します。

インバウンドって、観光のことじゃないの?

デジタルの時代になって、やたらと横文字を憶えなければならなくなりました。しかも技術は、日進月歩ならぬ秒進分歩。新しいカタカナ用語に面食らっているうちに、また新たな概念が登場する。そのたびにネットで検索して、若い人たちのインタビュー記事で付け焼き刃の勉強をする。

最近では特に、『インバウンド』という単語を聞く機会が多くなりました。経済効果が最大30兆円と日銀に資産された、2020年の東京オリンピック・パラリンピック。外国からの観光客が見込める……という文脈かと思いきや、そこに『マーケティング』がつくと、ちょっと違うらしい。インバウンドマーケティングって、いかに海外の観光客にたくさんお金つかってもらうか、じゃないの?

あのころの仕事は『アウトバウンド』だったらしい……

マーケティング・広告において、なによりも大切なのは『リーチとフリークエンシー』。マス4媒体……テレビ、ラジオ、新聞、雑誌は当然押さえるべき出稿さきでした。電車の中吊りも主要路線は外せませんね。駅貼りもB倍の連貼をどどーんとやって注目を集めて…という活動を20世紀の広告屋はやっていました。

とにかく消費者は広告になんて興味ないのだから、できるだけインパクトのある表現をひたすら求め、大量投下して振り向かせる。それが当たり前の中で、さらに他社を寄せ付けない強い広告をつくることこそが制作者の使命でした。

最近では、そういった旧来の広告作法を『アウトバウンドマーケティング』と言うらしいです。

対して『インバウンドマーケティング』というのは、ブログとかTwitterやFacebookなどのSNS、Youtubeやニコニコ動画などを使って行うものらしい。扱うメディアの新旧ってこと以外、どう理解すればいいの? と旧型のアウトバウンドクリエイターは悩んでしまいます。

いくつか調べてみて、どうやらこういうことかな? と思ったのが、

「アウトバウンドは押し付けるマーケティング、インバウンドは探して来てもらうマーケティング」という定義でした。

20世紀の広告屋としては、「探して来てもらう」というのがにわかに信じられません。なんせ消費者は広告になんて興味ないはずですから。できるかぎり賑やかに、お立ち台で扇子を振って多くの人に注目を浴びることが求められていました。

が、21世紀の人たちは違うらしい。もっと人びとに寄り添うように、人びとが求める情報を好まれるスタイルで提供する。マスvsパーソナル。それを可能にしたのは、「検索」という機能を持ったインターネットという仕組みなのでしょう。つまり、相手の都合に関係なく大声でがなりたてるような「嫌われるマーケティング」から、ユーザーの興味に合った情報に導く「好かれるマーケティング」の時代になってきたというわけです。

クライアントのためだけ? じぶん用にも

これまで、とくに広告系のクリエイターあるあるでよく言われていたことに、「ひとの宣伝は一生懸命やるのに、じぶんの広報活動はめんどうくさがる」というのがあります。いわゆる医者の不養生というやつですね。

けれど、ネットの時代になって、じぶんのウェブサイトくらいは持っていないと恥ずかしい…(しかもこれまで関わってきたマス広告の金額感からするとタダ同然でできるらしい)…ということで、おのれのクリエイティビティをいかんなく発揮したクリエイターのサイトを多く目にするようになりました。

しかし、残念ながら多くがそこまでで満足してしまう……。

個人的にTwitterだったりFacebookをやっているクリエイターは少なくありません。が、戦略的に、有機的に連動できているかというと、そこまではなかなかいかない。わたしのように、やはりどこかにデジタルアレルギーがあるのかもしれません。

少し興味を持って調べようとしても、単語で引っかかって先に進めない。それでめんどくさくなってしまう。このあたりも問題なのでしょう。コンバージョンだとか、え?なにそれ?という感じ。インバウンドマーケティングの日本語化?も必要なのだと思います。

また、時代の流れに目を向けてみると、クリエイティブ業務が組織から個へ移っていく動きが加速していると感じます。もともと他業種にくらべて独立しやすいのがクリエイターでしたが、ネット環境の進化によって、もはやひとつのところに常時集まっている必要はほぼなくなりました。

会社を運営するなんてリスクを取らなくても、人的ネットワークがあれば仕事は成立する。電話やメール等による直接的なやりとりを重ねていなくても、Facebookのタイムラインをときどき覗けば、仕事仲間がいまどんな状態かなんとなくわかる。

更新頻度が上がるといつも顔を合わせている気になるし、親近感も湧きやすいから、その流れで「仕事お願いしたいな」ということもある。これはむかしの営業さんが「用がなくても得意先に顔を出せ」といわれていたことに近い気もします。

クリエイターに限ったことじゃありませんが、SNSはますますソーシャルな生活インフラになってきているし、「そこにいない人」は忘れられてしまうリスクも高くなると言えるかもしれません。リアルとバーチャルの境界線がどんどんあいまいになっていく時代にわたしたちはいるのです。

そういう意味では、インバウンドマーケティングを学ぶことは、クライアントのためだけでなく、クリエイターが生きていくための条件とも言えそうです。

結局はどんなメッセージ(インサイト)を核に据えるか

ただし、インバウンドマーケティングは新しい重要な概念ではあるけれど、どこまでいっても「うつわ」です。肝心なのは中身。

対企業でも、対じぶんでも、どのようなインサイトを受け手に感じてほしいのか、その設計が大事になります。企業で言えばブランディング、個人で言えばセルフブランディング。どのような顔(アイコンやプロフ画像)で、どんなことを主に言うキャラクターなのか。「いかにコンテンツを充実させるか」がインバウンドマーケティングのひとつの条件と言われていますが、にしても、あまりに一貫性がなさすぎると、わざわざ「探して来てくれる」人、つまりあなたのファン候補に出会える確率が減るのは自明です。

SNSごとにアイコンが違ったり、ころころ変えてみたり…なんてのもソンだなぁ、と思います。

もうひとつ、インバウンドマーケティングを考える際にちょっと気にしておいた方がよさそうな考え方に『評価経済』というのがあります。オタキングとして有名な岡田斗司夫氏が提唱しているのですが、ネットの時代には、どれだけ他者から「いいね!」と言われているかが価値になる、と。

氏は『いいひと戦略』と挑発的なタイトルの本も出していますが、根底に流れるのはざっくり言うと「人柄はネットで拡散する」という考え方です。なので、くれぐれも誰かを不快にさせるような発言をしないことが身のため。

ネット環境では一度言ったことが蓄積するので注意が必要です。なんだか大変な時代ですが、ついにわれわれが個人でメディアをコントロールできる時代が来た、とも言えます。

(寄稿:おじさんライター)

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