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中止法はリズムを良くするも、一文が長くなるので使いすぎで破滅する

上手な文章を書く、文章ダイエット術の第六弾です。シリーズで一貫してお伝えしているのは、一文が長いと理解しにくい文章になるということ。本稿で紹介するのは、中止法の使いすぎによる文章への影響です。

ちなみにシリーズ五弾の序文で、「トップページで一行に収まるタイトルを目指している」と記載しました、がしかし、やめました。あっさりと一行タイトルへの挑戦を諦めてわたしです。理由は特にないのですが、しいて挙げるならば「伝えたいことを表記し切れないから」。コピーライターとして白旗を挙げることにもなりますが、大切なのは「読み手が理解すること」なので。ということで、ある時から一行タイトルではなくなっていますし、過去のエントリーもタイトルを変更しています。すみません、日和ました。

中止法を使うのは楽だけど、調子にのるとしっぺ返しを食らう

中止法とは、用語を連用形でいったん切って、次に繋げる日本語表記のことです。連用中止法とも呼ばれています。もう少し説明が必要ですので、例によってSEO対策に成功しているWebページから引用してみます。

日本語の表現法の一。「昼働き、夜学ぶ」の「働き」や、「冬暖かく、夏涼しい」の「暖かく」などのように述語となっている用言を連用形によっていったん切り、あとへ続ける方法。
引用:コトバンク

もう少し例文を挙げてみましょう。『(1)よく食べ、よく眠る。』『(2)会社へ行き、上司に詰められる。』『(3)飲んで帰り、妻に殴られる。』あたりが、皆さんも良く使うであろう中止法による文章です。説明するまでもありませんが、(1)の場合は『よく食べ』、(2)の場合は『会社へ行き』、(3)の場合は『飲んで帰り』が連用中止法の用法にあたります。『食べ』は『食べる』という動詞の連用形、『行き』が『行く』の連用形、『帰り』が『帰る』の連用形ですね。

連用中止法の連用形を知る

冒頭では連用形と中止法を同じものとして扱いましたが、実は、連用形と中止法は別物です。「じゃあ最初から別物として説明しろ」という声はごもっともですが、理解を進めていただくためにごっちゃにしました。日常生活において、連用形と中止法と連用中止法が完璧に使い分けられていなくても、まったく困りません。わたし自身も困ったことはありませんし、これから先の人生に大きな影響を与えることはないはずです。

がしかし、文章について解説するブログなので、ここからは連用形と中止法の違いをはっきりさせていきます。まずは連用形について。

連用形の小難しい話

連用形とは、用語に連なる際の形のことを指しています。国文法における、用語・助動詞の活用形と定義されており、全部で6個の活用の形があるんです。6個の活用の形は、まぁそのまんまなんですが、『六活用形』と呼ばれます。六活用形をすべて並べてみますと、(1)未然形、(2)連用形、(3)終止形、(4)連体形、(5)已然形、(6)命令形……です。もうどうでもいいですよね。

六活用形の2番目に定義されているのが連用形で、『彼は死に、荼毘に付された。』という文章の場合、『死に』のように次の用語に続くときに使われます。ちなみに動詞の活用のひとつに、『ナ行変格活用』というのがありまして、『死ぬ』『死んだ』の『死』という動詞は、(1)未然形:死な、(2)連用形:死に、(3)終止形:死ぬ、(4)連体形:死ぬ、(5)已然形:死ね、(6)命令形:死ね……と変化します。

連用中止法の中止法を知る

おそらく読者のほとんどが、前の項目でそっとブラウザを閉じたことでしょう。しかしやると言ったからには続けます。続いて中止法についての説明です。

中止法とは、述語である用語の連用形を用いて、文を言いっ放しにする表現を指します。『空碧く、山燃ゆる。』『足臭く、消臭剤をふる。』などのように、述語部分を連用形によって切って、あとの用語に続ける方法です。一度文を中止して、そのままの勢いで次の文に続ける方法と捉えてください。

連用中止法には、3個の弱点がある

連用中止法についてなんとなく理解いただけたかと思います。普段のメールやメッセージなど文章作成において、知らずしらずに使っている人が多いのではないでしょうか。

確かに連用中止法は使いやすく、なんとなく通な文章にみえるかもしれません。いや、通の文章にみえることはないか。しかし使いがちな連用中止法ですが、いくつかの弱点が存在します。

連用中止法で主述が不明になる

中止法を挟んで文を続けていくと、主語が不明になることがあります。先に挙げた例文、『空碧く、山燃ゆる。』の場合をみてみましょう。最初の『空碧く』においての主語は『空(が)』です。しかし後半においては『山(が)』となっています。例文程度の短い一文であれば、主語がどれなのかを迷うことはありませんが、長い一文になってくると混同する可能性が出てくるのです。

連用中止法は一文を長くする

本稿の趣旨になりますが、連用中止法で文を繋いでいくと、一文が長くなって読みにくい・理解されにくい文章が出来上がります。ひとつ例文をつくってみましょう。

夏になると、喉が乾きやすく、暑さから汗をかきやすくもなり、冷たい飲み物を求めがちで、水分を取るのは重要だが、ついつい糖分の入ったジュースを選び、体重の増加だけでなく、甘いドリンクによる副作用によって、かえって喉の乾きが堪え難いものになる。

ここまで稚拙な文になるケースは稀ですが、とにかく長くなる。解決方法としては、連用中止法を使った箇所で文を終わらせることです。もしくは接続詞を置くことで中止法の乱用は防げます。接続詞を用いた場合、ライターとして立ち上がろうとしている諸氏であれば、「一文が長くなっているな。不要な接続詞が多いのかもしれない」と気がつけるでしょう。

連用中止法によって意味が伝わらなくなる

連用中止法の弊害の最後は、文章の意味が理解できなくなること。一文が長くなることによる影響と同じですが、せっかく書いた文が読み手に理解されないことになります。いちいち理由を説明したり例文を挙げることは割愛しますが、想像通りの結果になるのです。

連用中止法の頻出に注意して、読みやすい一文を

国語の授業ばりに、文法について説明してしまいました。以前のエントリーでも記載しましたが、わたしは小学校〜中学〜高校において、国語の成績が良かったことがありません。ですので、文法については間違いが多々あると自負しています。そのくせ文章を生業にしているとか、文法に触れるブログを書くなんてけしからんわけですが、ライターであるからこそ、勉強中ということで。

本ブログに訪れてくださった皆さんと一緒に、正しい文章や読みやすい文章について学んでいこうと思っています。現場からは以上です。

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